園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2023年06月21日

先月から各学年体育教室が始まりました。体育教室とはいっても、子ども達にとっては「楽しく体を動かすあそびの時間」という認識で「クラスの先生ではない別の先生(体育の先生)がなんだか楽しいことをしてくれる日」そんなところから始まります。みんなと準備体操をしてみたり、ピョンピョンジャンプをしてみたり。たったこれだけのことでも、子ども達にとってはみんなと同じことをやったり隣の友だちと肩が触れたりしながら、なんだかクスっと笑顔になってしまう…そんな時間です。普段はあまり立ち入らないホールで活動するというのもまた何だか特別…そんなワクワクもあるかもしれません。

そんな体育教室ですが、先日体育専任の教諭が書いた保護者向けの『体育だより』に目を通していると、こんな内容が載っていました。

それは体育専任教諭と年中児とのやりとりの一場面のこと。

体育教諭が年中さんに「たくさん失敗していいよー」と伝えると「えー!だめだよー」という声がたくさん聞こえてきたとのこと。「いやいや、いいのいいの。失敗したら、先生が助けるから。そしてどうやったら上手になるか先生が教えるよ」と。すると子ども達も納得した様子だったそうです。「まずはやってみる」とか「失敗は悪い事ではない」ということを心にとめていろいろなことにチャレンジしてほしいとおたよりには書いてありました。全くその通りだと思います。

私も年長さんをスケート教室に送り出す時には、「みんな~いっぱい転んでおいでね~」という声を掛けます。すると子ども達からは「ちがうでしょー!滑っておいででしょー!」とか「転んだらダメでしょー!」なんて叱られます。しかし、「いいのいいの。転ばないわけないんだから。いっぱい転んでいっぱい失敗しているうちに滑れるようになるんだよ」と声をかけています。

『失敗』と聞くと、大人も子どももマイナスなイメージを持つと思います。「失敗してはいけない」とか「失敗は悪いこと」と、こんな小さな子ども達でもそう思うんですね。しかし、そもそもできないことがイコール失敗になるのだろうかと考えると、そうでもないような気がします。

少し前に年長女児のHちゃんが「園長先生!Hね、今まではうんてい最後までできなかったんだけど、何回も練習したら最初から最後までできるようになったんだよ!」と教えてくれました。「えー!すごい!園長先生もHちゃんのうんてい見たいな」とお願いすると、「今は手が痛くてちょっとできないから、これが治ったら見せるね☆」と張り切って見せてくれたてのひらがこちらです。

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久しぶりに子どものてのひらにできた豆がつぶれているのをみました。こんなになるまでHちゃんは頑張って練習したのですね。「Hちゃん。これはすごいね。たくさん練習した人だけができる特別な豆ができて、それがつぶれちゃったんだね。でも、これはいっぱい頑張った証拠だからすごいことだよ。頑張った頑張った」と伝えると大満足の顔で教室に戻っていきました。

そして今日、「園長先生!もう治ったよ。」とにこにこでてのひらを開いて見せてくれました。「おおー!じゃあ、見せて!」とリクエストすると、スタートからゴールまで落ちずにうんていを元気にやりきった姿をみせてくれました。そのHちゃんの表情はというと…もちろんとびっきりの笑顔でした☆

うんていも、決してできないことが失敗ではないし、子ども達の思う「失敗」なら何度やったっていいんです。「うまくできた」「上手にやれた」「成功した」という成功体験だけを最初から求めたところでできるわけがありません。むしろ今この幼児期にたくさんの小さな「できないこと」に向き合い、このHちゃんのように何度も練習したら「できた」という満足感や達成感を積み上げていくことがとても大事なことのように思います。そしてそんな過程を経て、Hちゃんのようにできなかったことができるようになったなら、心の満足度や自信は大きなものとなるでしょう。

初めてのことや難しそうなことには、躊躇する子どももいます。しかしまだ3~5歳の子ども達。できないことや経験したことがないことがたくさんあるのが当たり前。ですから、「できないかも」「失敗したらいやだな」という子どもの萎縮してしまう心を、私達大人が「失敗してもへっちゃらへっちゃら」「最初はできないのが当たり前」と許容し、「いつも応援しているから大丈夫だよ」という安心感を与えていけたらと思っています。

今、失敗をしないで、大きくなってから壁にぶつかったり挫折を味わったりした時に、はたしてひとりひとりの心は踏ん張れるか。心もたくましくあってほしいこれからの子ども達のために、たくさんの「できなかったこと」をとがめることなく、次につながるエールとして私達大人が応援隊になっていけたらいいですね。私もめるへんっこたちの応援団長として日々エールを送ります。

 

 

園長   伊勢 千春

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