園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2023年03月16日

あたたかな春の日差しの中、本日、76名のかわいい子ども達の卒園の日となりました。

年長さん、卒園おめでとう。

今年の年長さんが年少組で入園した三年前。

新型コロナウイルスの影響を受け、当園も6月から新年度が開始となりました。思い起こせば震災を経験した時と同じように、先の見えない中、保護者の皆さんも大変な不安やもどかしさがある中での入園になったことと思います。それは私たちも全く同じで、これまで当たり前に行っていた教育活動や行事を全て一から見直し、計画を立て、練り直していく日々でした。考えなければならないことが大幅に増え、消毒作業や感染が広がらないよう環境の工夫などにもかなりの時間を要しました。

その中でも私が一番悩んだこと。それは、幼児期には人とのコミュニケーションを一番大切に育まなければならないにも関わらず、人との関わりを減らさねばならないという動きに、大変葛藤した日々でした。表情をマスクで隠してしまいながら子ども達と関わる自分にも納得がいかず、こんな小さな子ども達がマスクをつけて生活する姿にも心がついていかない状況でした。もう少し早く出口が見えると当初は思っていましたが、ここにきてようやく…何とも長い道のりでした。

年長さんが入園したての時、とにかくお母さんから離れるのが嫌で大泣きしたり大暴れしたり、てんでバラバラ自由に好きなところへ散っていき、お集まりをするにも一苦労。今ではそんな光景が何ともいとおしく懐かしくよみがえります。

そんな子ども達も、皆で力を合わせることや最後まで粘り強く頑張ることを経験した運動会以降、ぐっと顔つきが年長らしくなりました。こんなに大きく変化を感じられたのは初めてかもしれません。あんなに個々が自分の思いのまま行動していた数年前を思い出すと、年長児が一体となって表現したあの合唱会での歌声と姿はまさに心が成長した証そのものでした。

新型コロナウイルスの影響を最も受けた幼児期を過ごしてきた年長児ではありますが、それでも、このような中でも、友だちと関わること、力を合わせること、皆とやり遂げることをたくさん経験してきました。皆と顔を合わせ、会話を交わしながら食べた給食では「給食ってみんなで食べるとおいしくて楽しいね。」という言葉が出たのも、感性が豊かに育ってきたからこそ子ども達が自ら気づけたことでした。当たり前のことが当たり前にできなかった時期があり、その時期を子どもたちなりに乗り越えてきたからこそ、このような想いにも子ども達自身が気づけたのかもしれません。

卒園式のリハーサルの時、年長児に卒園証書を手渡しましたが、その時の子ども達一人一人の表情は自信に満ち溢れ、どの子の表情もキラキラと輝いて見え、まるでこれから明るい未来に向かっていく尊い光のように感じ、年長児を誇らしく思いました。この表情を見て、もしかしたら、大人が思うよりも子ども達はずっとずっと幼児期を謳歌していたのかもしれない、そう思いました。

子ども達一人一人の育ちは、大人の物差しで、はかれるものばかりではありません。子ども達そのものを見ていれば、どのような部分が育ったのかは子ども達自身が証明してくれているはずです。どうかこの幼児期が、子ども達にとってかけがいのない日々になってくれているよう、心から願います。

保護者の皆様方、コロナ禍という状況の中でも、サークル活動や委員会、親父の会やボランティア活動など、様々な活動にご尽力いただきましてありがとうございました。このような前向きな大人の後ろ姿は、きっと子ども達にも伝わっているはずです。この場をお借りして御礼申し上げます。

この先も子ども達が様々な人と出会い、関わり、前向きにひたむきに歩んでいけるよう願います。そして大きな心で子ども達を包み込んでいけるようなそんな社会であることを願いながら、年長さんを新たなステージへ送り出したいと思います。

年長さん、元気に小学校へ、いってらっしゃい。

 

 

園長   伊勢 千春

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