園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2022年10月20日

担任が発行しているクラス便り。そのクラスの裏話や面白エピソードが手に取るように伝わってきたりクラスの情景が浮かんできたりするため、おたよりチェックをいつも楽しみにしているところです。

先日、年少組のあるクラスのおたよりにこんな記事がありました。

入園したての頃は生活習慣面もまだ自分でできず、整うまでにかなり時間がかかっていたとのこと。しかし今は少しずつ自分でできる力がついてきていると。にもかかわらず、身支度や給食に時間がかかりあそぶ時間が削られてしまうという現象が起こっているという内容でした。その原因は、おしゃべりが止まらない(笑)、自分のことよりも周りのことがとにかく気になる、ぼーっとお友だちがやっていることを眺めている等々。いずれにしても周りが影響して手が止まっているようです。しかしこれはダメなことではなく、まさに年少さんに起こり得る姿です。入園したての頃は周りの事など全く目に入らず、友だちのことも気にならずに自分の気の向くまま行動していたのに、少しずつ友だちの存在に目が向き、周りとの関わりが生まれてきたからこそ、新たな問題が出てくるのです。友だち同士のいざこざや小さなトラブルだってそうです。友だちとのいざこざやトラブルは、相手も関わってくることなのでできることなら回避してほしいと思うのが親心です。しかし、友だちに目が向き、友だちとの関わりが生まれなければこのような状況にもならないわけですから、成長の過程の大事な経験でもあります。そして、このように身支度や食事に時間がかかる理由も変化してきています。しかし、いずれにしても身支度が進まなければあそぶ時間も減ってしまうし、いつまでも時間だけが経過してしまいます。そこで、このクラスでは『生活習慣強化月間』と題し『早くできたらたくさん遊べるよ作戦』を決行中とのこと。

ー作戦その1ー

「さあ、先生はもう準備出来ちゃったから遊びに行こ~っと」と早く身支度が終われば早く楽しいことができることをアピール。これまでは「待つ」という姿勢を一番に考え見守っていたところから、大人側も関わり方を変更。「僕も早く遊びに行きたい!だから早く着替えなくっちゃ☆」という刺激を与える先生のこのようなアピールは、子ども達をハッとさせ自ら行動する気持ちを起こすこと間違いなし。

ー作戦その2ー

実況中継してスピードUP作戦。「○○ちゃんはもう~~が終わっています☆」「おっ!○○君は○○が1番でした!」など、周りの子を褒めながら刺激を与える作戦。こうすることで、自分もそんなふうに認められたい、褒められたい、「ぼくもぼくも!」という気持ちが沸き起こり、先生が注意したり促したりしなくても自然とスピードUPが狙える作戦です。

 

このクラスだよりを目にし、以前読んだ本に『肯定的な言い方の実践運動に努めましょう。否定的な言葉撲滅運動』という内容が載っていたのを思いだしました。

A 「この牛乳飲まないと大きくなれないよ』

B 「この牛乳飲むと○○みたいに大きくかっこよくなれるよ」

A 「野菜食べないと強くなれないよ」

B 「野菜食べると風邪もひかず元気パワーがモリモリになるよ」

A 「早く寝ないと明日起きれないよ」

B 「早く寝ると朝気持ちよく起きられるよ」

同じ内容を子どもに伝えるにも、肯定的な言い方と否定的な言い方では受ける印象が違いませんか?血液型とは違うので、本人の心がけ次第でA型だった人がB型に変わることができると書いてありました。

 

また、以前受けた研修のこともふと思い出しました。

声をかけてもなかなかお部屋に戻れない子や、何度繰り返し話しをしてもスムーズに取り組めない子などへの関わり方。

その子にばかり注意を向け、できないことをとがめるのではなく、周りの子にあえて注意を向け「わぁ~○○君ってお片付け上手だね」「お!○○ちゃんはお集まりするのが早いね」などできている周りの子の行動をたくさん認め褒めていくことで、自分も認められたい、褒められたいという思いが出て行動に移しやすいという内容でした。そのような環境に影響されて自ら行動に移ることができれば、その子のこともたくさん褒めてあげられ次につながるようになり、本人にとっても周りの子にとっても気持ちの良い環境がつくられるという研修内容でした。

注意や小言ばかりでは育つものも育たないし、親や大人の想いは心に響いていかないでしょう。

 

私自身も子育て全盛期には、幼い我が子にたくさんのトゲのある言葉を発してしまい、あとで後悔するといったことも度々ありました。ついつい子どもが小さい時には脅しになってしまうような言葉が出てしまいがちです。親も人間ですから、疲れていたり余裕がなかったりすると、考える前に言葉が口をついてしまい、後に後悔する…ということは誰しもが経験のあることだと思います。そして家族など自分に近い存在にはなおのこと、なかなか心遣いができないものです。

物の見方や言葉の使い方を少し変えるだけで、心のトゲトゲが生まれるかヤル気になるかの分かれ道になり、どちらの道を進んでいくかで子どもの心の豊かさも変わっていくかもしれません。

 

 

園長    伊勢 千春

 

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