園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2022年03月15日

春の足音が聞こえてきました。

頬を伝う風も柔らかく暖かな春の気配を感じます。

明日、年長111名のかわいいめるへんっ子たちが幼稚園を巣立っていきます。

ここ2~3年は、新型コロナウイルス対策がいつも隣にある状況でした。それでも、子ども達には極力制限をかけず、のびのびと園生活を過ごす中で、人との関わりを学び、五感を働かせ心が磨かれていくような豊かな園生活を…という思いで教育にあたってまいりました。

仙台市からの通知では、卒園式の在り方について、歌唱の必要性を検討し、CDの活用などを考慮することなど、悩ましい内容が届いていました。何度も文書とにらめっこし、他の幼稚園や学校での卒業式の開催方法等の情報も得た上で、卒園式での歌唱を含む内容やマスク着用の在り方を考えてきました。卒業式では歌唱は校歌も含み全てカットというところもあったり演奏だけ聞き、心で歌いましょうというところもあったり。証書授与も名前を呼ばれても、返事は控えたり代表者が証書を受け取ったりという対策をとっているところもあるようです。

しかし、年長の子ども達が担任から名前を呼ばれ返事をする最後が証書授与なのです。私も年長の担任時代は証書授与の呼名の際は一人一人に向けて、ありったけの心を込めて一人一人の名前を読み上げていました。だから子ども達にも、たった一言「はい」という返事でも、担任から呼ばれる最後の名前には、しっかり返事で想いを表すことを先日の予行練習時に伝えました。そして歌唱についても、園の集大成の卒園式にやはり子ども達の歌唱は必要…という考えに至りました。

お別れの言葉の発表も、ステージに上がる子ども達は、一方向を向いて下に座っている子ども達と一定の距離をとっているため、基本的にはマスク着用をせず発表する予定です。練習時にその様子を見て、久しぶりにマスクのない子ども達の、しかもあんなに元気な声の、あんなに生き生きとした子ども達の表情を見られて、すごくすごく嬉しかったね…と先生達と話し胸がいっぱいになっていました。子ども達が立派に成長したこの姿を、堂々と巣立っていく凛々しいこの表情を、幼稚園最後の日におうちの方に観ていただかないという選択肢は、もはやこの時点でなくなっておりました。そこからは、卒園式で子ども達のピカピカで自信にあふれた表情を見ていただくために、再度会場の配置を変更したり距離をさらに広くとったりしました。また、子ども達が無理なくできるのであれば必要に応じてマスクの着脱を行いながら進めていこうということになりました。ギリギリまで考えての対応のため、当日至らぬ点が出てくるかもしれませんが、コロナ禍であっても可能な限りの感染対策を講じた上で、年長の子ども達の最高の巣立ちの日になるよう精いっぱい努めます。

そして、年長の保護者の皆様には、当日は子ども達の表情だけではなく、証書を受け取る時の後ろ姿や着席時の後ろ姿なども含め、自信にあふれ、たくましくなった我が子のうしろ姿もしっかりと目に焼き付けていただければと思います。

 

最後に

先日、園庭のプール脇にある梅の木を見て「先生!梅の木の枝がピンク色になってる!」というので行ってみると、ほんのりと枝がピンク色に染まっていました。そこにいた子ども達がみんな不思議がっている姿をみて、ふと思い出したことがありました。

以前、園に隣接する長命館公園のサポーターズクラブのIさんから紅梅の木の枝をいただいたことがありました。その時、Iさんが紅梅の木の枝の皮を削ったものを見せて下さいました。見ると枝の皮の下はなんと赤い色をしていて、枝の切り口の断面も赤く染まっていました。

Iさんの話では、この枝の赤い色は梅の花が開くまでの間だけであって、梅の花が咲けばもう赤い色は枝にはみられなくなるとのことでした。不思議だったので、当時調べてみると、木が乾燥するにつれ色が抜けていき、徐々に枝の内面の色は褐色になるため、ちょうど梅の開花の頃には枝の内面は紅色ではなくなるとのこと。実際その時いただいた紅梅の枝の切り口は花開くまでは赤くなっていましたが、梅の花が咲くとその切り口は白っぽくなり赤みがなくなっていました。

その当時、Iさんから「なんだか紅梅の木の枝は先生達みたいだね。」と言われました。

「紅梅の木の内面は最初はこんなに赤いのに、花が開くころには花に色味を吸い取られるかのように白く変化するんだよね。たくさんの栄養を子ども達に与え、子ども達がそれを吸収して花が開いているみたいで、先生達が枝だとしたら子ども達は梅の花のようだね。」と。

枝の内面の赤い色は、冬の寒さが厳しければ厳しいほど濃くなり、やがて咲く紅梅の花の色もその分だけ濃く深く色味が増すそうです。

この一年も慌ただしく心落ち着かない日々が多々ありました。

しかし、紅梅の木になぞらえて、試練があった分だけやがて咲く花が色味を増し綺麗に花開くとしたら、それらの苦労も決して無駄ではなく、喜びに変わります。

そう考えれば、自然の産物にも人にも心地よさだけではなく、時に身を持って受ける試練も必要ということになるのでしょう。そして受けた厳しさの影響は、時が経てばやがて良い形となり実を結ぶのでしょうね。

 

子ども達にとっての一番は何か…その思いで幼児教育に当たってきたこの一年。

いつか子ども達の咲く花が、深く、濃く、人の心を魅了するような、そんな色味のある花になるよう願い、小学校へ送り出したいと思います。

そして、これから先の子ども達の未来が、平和であることを願います。

 

 

園長    伊勢 千春

 

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