園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2021年10月04日

運動会も先週無事終了しました。

運動会前、年長担任から「今、リレーや組体操をしているが、翌日になると子どもから腕が痛い、脚が痛い、おなかが痛いとの訴えがあり、どうやら筋肉痛のようだ」という話を聞き、衝撃を受けました。幼児でも筋肉痛になるのか?! そして、めるへんっことしたことが筋肉痛とは(笑)!と驚きました。先生達とは、コロナ禍ということもあり、家庭でも外に出る機会が減ったり公園であそぶ機会も減ったりしているからかな…と話をしていました。

そういえば、以前ニュースで、『新型コロナウイルスによって変化した子どもの生活実態』に関する調査を小中学生の子どもを持つ保護者を対象に行った話題が出ていました。それによれば、コロナ前と比べ小中学生の『自宅で過ごす時間』が86,3%増加したのに対し『屋外で遊ぶ時間』が67,1%減少したとの回答があったそうです。そしてPCやスマホなどの視聴時間が一日平均約80分でコロナ前より20分長くなり、体力や視力の低下、運動不足などを心配する声が上がっていました。生活環境の変化が今後子ども達にどのように影響するのかしないのか、やはり気になるところでした。下の小中学生の『生活時間の変化』のグラフをみると、PCやスマホ、動画やゲーム、テレビ視聴の時間などがだいぶ増えていることがうかがえます。

IMG_0180

そして極端に『屋外であそぶ時間が減った』という結果が出ています。その理由として「感染防止のため外に出ていない」「コロナの影響で普段あそんでいた友だちに声をかけにくくなった」というのが主な理由でした。

この調査に携わった東京工業大学名誉教授でこども環境学会代表理事の仙田先生によれば、遅れを取り戻すために授業や塾などやらなければならないことが増えると、子ども時間が分断され、好きなことに集中できなくなり『子ども時間の過密化』も進んでしまうとのこと。そして、外あそびの減少と過密化の影響は、今後子ども達の心身に大きな影響をもたらすといいます。外あそびができている時間はコロナ前と比べ4割以上減っていることが今回の調査で分かっており、これが長期化すると運動不足による体力の低下、自由にあそべないことによる精神的なストレスなど、子ども達の心身に様々な影響を与えることが懸念されると指摘しています。

『子どもの頃に我を忘れて物事に取り組む経験がないと、大人になっても集中できないという傾向がある。また、集中してあそぶことで物事を成し遂げたり、みんなで協力してやり遂げる力などが育まれる。このような力は非認知能力といって子どもが前向きに生きる力となるもの。子どもにはなるべく制約をかけず、自由にあそんでもらうことが中枢神経の開発、そしてコミュニティ形成や友情を育む力を伸ばす非常に大切なこととなる』

と話されています。

新型コロナウイルスの影響は、今だけのことではなく、今後子ども達が成長していく上で心身の発達に大きな影響を及ぼす恐れがあるかもしれません。

 

実は、運動会の年長児恒例の組体操も、人との接触があまり推奨されていないこのご時世に、行ってよいものかどうか少し迷いました。しかし、出した答えは、子ども達の踏ん張る力ややり抜く力、人と協力して成し遂げる力を、やはりどうしても身に付けさせたいという想いでした。そのような力を育むために今年も組体操は外せないとの考えから、それならば私達が配慮できることは何かということを考えました。そして、本来ならばひとつひとつの技が決まるたびに「ヤー!!」と掛け声をかけていましたが、マスクなしでの組体操だったため、掛け声は最後の大技の時だけにしたり、ひとつひとつの技をなるべく子ども同士の顔が近づかないものにしたりと人知れず工夫しながら行った今年の組体操でした。

新型コロナウイルスの影響の有無にかかわらず、思い切り体を動かす機会を作ることも、夢中になって遊ぶということも、そして何かを成し遂げることやみんなと協力してやり抜くことも、家庭では難しいことだと思います。だからこそ幼稚園がその役割を果たさなければならないとも思っています。たくさん身体を動かしたり夢中になって遊んだりし、段階を踏んでみんなとあそぶことが楽しいというところから、徐々に人と協力することの大切さや組体操のようにみんなで成し遂げる力をつける機会を設けるなど、家庭ではなかなか学べない分野を学んでほしいと願いをこめて保育にあたっています。

『認知能力』は知能検査で測定できる能力ですが、『非認知能力』は意欲や自信、忍耐や自立、協調といった数値では表せない分野です。しかし、今後子ども達が前向きに生きていくために必要な『非認知能力』は、幼児期からしっかり子ども達に根付かせていきたい部分です。ですから、今後もその部分の成長にこだわり、大事にしながら幼児教育に努めていきたいと改めて感じました。

 

暑かった時期も終わり、隣の風の子公園の森も様変わりする時期です。

どんぐりや栗、キノコ、そしてこれまで鮮やかだった木々の緑も、黄色やオレンジ、赤に衣替えをし、違った装いで子ども達を出迎えてくれます。これまでの季節ではなかなか出会えなかった『秋』に出会えるチャンスです。目で見て、手で触って、匂いをかいで、五感がフル活動しそうな予感がします。

また、運動会という行事を経て、これまでより体力もつき体幹も鍛えられたことと思います。そんなめるへんっこたちは、きっと今まで以上に風の子公園での木登りや崖のぼりにも果敢にチャレンジしていくだろうとワクワクしています。そんな小さなひとつひとつの積み重ねが、子ども達の自信となり次への意欲につながっていくでしょう。

年度の後半も子ども達の成長がますます楽しみでならない今日この頃です。

 

 

園長    伊勢 千春

 

 

 

 

ご家庭で

© めるへんの森幼稚園. All Rights Reserved.