園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2021年05月06日

GWが明け、来週から通常の幼稚園時間が始まります。これまでは慣らし保育ということで、保育時間が短く設定されていましたが、ようやく平常保育が開始です。

4月終盤は個人面談も設けたため、担任とも顔を合わせられたと思います。短い時間ではありましたが、少しでも保護者の皆さんの心配事や不安が取り除かれていればよいなと思っています。

新年度が始まったばかりのこの時期は、我が子の園での様子が気になっているご家庭はたくさんあるのではないかと思います。幼稚園で何をしているのか、自分できちんとやれているか、先生の話は聞いているか、友だちはできたか等々…きっと心配事を上げたらキリがないという保護者の方もいらっしゃるでしょう。

「今日は誰とあそんできたの?」「今日はどんなことをしてきたの?」など、子どもが帰ってくるとそんな質問を問いかけることもあるのではないでかと思います。しかし、よく耳にするのが、子どもにそのような質問をしても「わかんない」もしくは「わすれた」という一言が返ってくるだけ…ということが多々あるようです。そうなんです。大抵親子の間ではこのような会話がなされていることが多いようです。個人差ももちろんありますが、比較的女の子は自分から園であったことや友だちの事などを家でもちらほら話しているようですが、男の子はなかなか難しい傾向があるようです。

特に新入園の子ども達は園に行くだけで…新しい環境に飛び込むだけで精いっぱいの状態です。そして、まだ自分の担任の名前と顔を覚えたかどうかくらいの状況のため、自分の周りの事、友だちの事になんてほとんど目が向かないのが当たり前なのです。誰とあそんだかを聞かれても、名前がまだよくわからない、『この子とあそびたい』『○○をして遊びたい』というよりは、砂場であそんでいたら隣にたまたま誰かがいて、何となく一緒にあそんだ…ということもあるでしょうし、先生と追いかけっこしていたらほかの友だちも混ざってきて、結果的にたくさんの友達と追いかけっこをして遊ぶ機会が生まれたということもあります。このように実際は何人かと一緒に遊んでいる場合もありますが、子どもにとっては、自分はただ先生に追いかけられたり先生を追いかけたりしてあそんだ、という認識でしかない場合もあります。子ども自身が捉えるあそびの認識と、教師側から見るあそびの認識とでは違う場合も多々あります。年少児などは今はまだそのような段階の方が多いため、なかなかお子さんに聞いても親の望むような返事がこないことが多いかと思います。

そして「なにしてあそんできたの?」という問いに、「なにもしなかった」という返答がある場合もあるでしょう。まだ好きな遊びを見つけられていない子もいるでしょうし、『楽しそうだな~』と思ってもあそびの輪の中に入っていかず、あそびをじーっと観察しているだけ…ということもよくあることです。すぐにあそびを見つけ自分からどんどん入っていく子もいれば、今はみんなのあそびをただただ観察していて『見ているのが楽しい』という子だっているんです。最初は硬い表情であそびを傍観していた子も、少しずつ先生やお友だちが楽しそうにあそんでいる姿を観て、表情が緩み笑顔であそびを見ている姿に変わっていきます。それはひとりひとりの表情を見ていればその変化がよく分かります。

ですから今の時期は、まず新しい環境に慣れて心の安定をはかること。そして家庭という小さなコミュニティから離れ、幼稚園という広いコミュニティの場で自分の好きな遊びを見つけること、これが最優先となるでしょう。友だちとあそぶという行為の前に、まずは自分の好きな遊びやお気に入りのあそびを見つけ、充実をはかることが大事です。幼稚園には大好きなママがいないけれど、困った時は先生がいるから大丈夫なんだということを認識し、お砂遊びでも滑り台でもありんこ探しでも、自分が大好きなことでいっぱい遊べるところが幼稚園なんだ…ということが分かれば第一段階突破。そのような個々の安定がはかれれば、自然に周りにも目が向き、隣にいる友だちやクラスの友だちのことも目に入ってくるはずです。それは新入さんにだけ言えることではなく、クラス替えをして先生やクラスの友達が変わった年中年長さんにも言えることです。

子ども達の成長はそういうものです。少しずつ、ゆっくり進んでいくものなので、私達周りの大人も、焦らずゆったりとした目で子ども達と接していくことがまずは大事になってくると思います。

そして、楽しいことが見つかったら、きっと子どもから話してくれるはずです。こちらから幼稚園の事や友だちのことをいろいろ聞きだすよりも、その機会が訪れるのをゆっくり待ってみるのもいいかもしれませんね。

案外子ども達は親が思うよりたくましいものです。朝泣いて登園してきても、一日中ずっと泣いている子にこれまで一人もであったことがない…と断言してもいいほどです。もちろんその日の気分によって登園にあまり前向きになれないこともあると思いますが、バスに乗ってしまえば、幼稚園に来てしまえば、必ず何かに目が向き何かに心が向きその子のペースで少しずつ『周りを観察する』ところから始まります。ですから、朝、少々登園をしぶっても慌てずおおらかな気持ちで送り出していただけたらと思っております。かくいう私も、我が子を保育園に預けていた時は、泣いて先生に抱っこされている娘を見て、車に乗った瞬間に涙してしまったこともありました。しかし、お預けした先生を信じて、お預けした保育園を信じて、気持ちを切り替え職場に向かったものでした。今思えば、なんて初々しいママだったのだろう♡と当時の自分を懐かしんでいるくらいです(笑)。

このような経験を経て子どもも成長し、親もまた親として成長していくのだと思います。

 

子育ては親育て。

悩みながら一生懸命子どもを育てている…という大人側の想いはもちろんありますが、同時に親も子どもに育てられているのです。私も我が子を育てながら、親としてたくさんのことを子どもから学んできたし、失敗もたくさん繰り返しながら親として少しずつ少しずつ成長してきたと実感しています。

試行錯誤を繰り返しながら私達大人も子ども達と一緒に成長していきたいですね。

 

 

園長    伊勢 千春

 

 

 

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