2021年05月18日
クラスでたびたび発行されるクラスだより。そのクラスの『今』が分かる内容になっており、どんなふうに幼稚園生活を送っているか、便りを通してお子さんのクラスをある程度把握していただけていることと思います。私の仕事のひとつとして、そのクラスだよりを発行前に確認し、誤字脱字をはじめ、内容や保育の視点などを担任と直接共有したり時に指導を加えたりすることができる機会にもなっております。
その中で今週、年少かぜ組のクラスだよりの中に『いちごとっちゃった』というタイトルの記事がありました。プール脇にあるいちご畑のまだ緑色のいちごをC君がてのひらいっぱいに摘み取ってクラスへ戻ってきた時の様子が書かれていました。
その姿をみて『いちごを見つけて嬉しくなってとるC君の姿が目に浮かびました』と担任は綴っています。そしてその日の帰りの集まり時に緑のいちごを実際クラスの子ども達に見せると、中には「赤くなったら食べられるんだよ～」との声。そして「緑のいちごは美味しくないの～？」と担任が投げかけてみると「おいしくないよ！赤くなったら」という声。本当にそうかな？と子ども達へ投げかけ、実際担任が味見をしている姿を子ども達に見せています(笑)。その感想はといえば、もちろん「うぇ～！」「すっぱ～い！」「すっぱいどころかしぶい～」などおいしくない表現(←これは演技ではありません(笑))。そんな担任の姿を見て、子ども達はポカ～ン…。そしてその静けさの後に笑いがどっと起こったそうです。そんな担任の姿を目の当たりにしたためか、緑のいちごをとってくる子は今のところ現れていないことを綴っています。記事の最後では、緑のいちごを両手いっぱいに摘み取ってきたC君のおかげで、幼稚園にあるいちごの存在やいちごは赤くなったら食べられることをクラスのみんなで知ることができたことに感謝しています。
お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、この記事の中では、まだ食べるには早いいちごをたくさん摘み取ってしまったC君が、怒られたり注意されたりする場面が一切出てきていないのです。そして、『まだ赤くないいちごをとってはいけません』というような禁止語を使い、大人側から答えを教えてしまう指導をしていないのです。これはどうしたらよかったのか子ども達自身に考えさせ、その答えが本当にあっているかどうかを実践した学び方です。
そうなんです。
子どもを叱るのか、注意するのか、はたまた気づかせるのか、本来なら私達大人が子どもへかける言葉が区別されていないといけないのです。たとえ本人に理由があっても、『絶対にダメなものはダメ』ということを伝えなければならないこともあります。それは私の中では命にかかわることと人を傷つけること、この２点だけです。分からないでやってしまうとかまだ言葉の発達がゆるやかで言葉より先に手が出てしまうということだってあるでしょう。その状況を理解した上で、それでも『これはダメ』ということを繰り返し伝えるようにしています。
しかし、大人から見て子どものマイナスな行動の中には、例えば今回のいちごのように悪いことだとは全く思わずしてしまうこともあるでしょうし、ちょっとしたいたずら心がむくっと湧いてしまうことだってあるでしょう。そしてほんの少しの好奇心の現れからの行為ということもあるかもしれません。間違えてやってしまったことなのか、悪いことと知っていながらやったことなのかも含め、私達大人が子どもへ関わる時は、まずはその状況を見極めることが大事になってくると思います。
しかしそうはいっても、日々の子育てに奮闘中はなかなかそんな心の余裕を持つのは難しいですよね。私も必死に子育てしていた時代はそんなことを考える前に、目の前の我が子のその行為だけを見て、頭ごなしに叱ったり口がついて出てしまったり…ということはしょっちゅうでした。しかし心に少ーし余裕がある時、毎回は難しくても何回かに一回でいいので、今目の前で子どもがやっている行為はすぐに禁止すべきことなのか、叱るべきことかを頭で一度考えられたらいいですね。私は口がついて出てしまいそうな時は『落ち着け、自分』…と自分自身におまじないをかけ、深呼吸を一つしてその行為を見極めてから我が子に声をかけるよう努力していました。
今回のいちごのように、最終的には子ども自身がこれはやらない方がよいと学ぶことができるような子どもとのかかわり方ができたら最高なのですが、なかなか家庭では難しいかもしれません。しかし、意識しなければ何も変わりませんが『ちょっと意識する』『頭の片隅にちょっと置いておく』だけで親としての我が子へのかかわり方も少しずつ変わっていくと思います。
是非『ちょっと意識して』子どもの行為を見つめてみませんか♪
ちなみに…
担任が体を張って?!(笑）味見したいちごは、こんな感じです☟ 味見しなくても、大人なら…もはや口の中は想像できますよね（笑）
園長 伊勢 千春