園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2020年12月18日

二学期も来週月曜日で終了です。

昨日は雪で悪天候の中ではありましたが、無事合唱会を終えることができました。保護者の皆様には足元の悪い中、会場までお越しいただき、そしてコロナウイルス感染対策についても様々なご協力をいただきまして本当に感謝いたします。ありがとうございました。

 

さて、今年は創立40周年の年であったものの、今置かれているこの状況下の中ではゆっくり40周年をかみしめる余裕はなく、時が過ぎていったという印象が残ります。そんな中でも、これまでの自分を振り返る、そして原点に立ち返るということはなかなか機会がないとできないことだろうと思い、今年の締めくくりに少し心穏やかに振り返ってみています。

これまでの自分を振り返ると、物の見方を変える転機が幾度かありました。それは全て周りの人からの言葉によるものです。

就職してまだ間もない頃、当時バス添乗員はおらず、各担任がローテーションで朝帰りのバスに添乗していました。その日は好きな遊びのコーナーを自分で選んであそぶ『めるへんたいむ』の日で、私が担当するコーナーもあったのに、バタバタしながら朝のバスに乗り込んでしまいました。そのため、担当するコーナーのポスター掲示をすっかり忘れてしまいました。子ども達は朝くると、掲示してあるコーナーポスター見て、どのコーナーに遊びに行こうか友だちと相談したりワクワクしながら品定めをしたりしているのです。そのコーナーポスターの張り出しを忘れてしまったため、コーナー数もひとつ少なくなっていたわけです。バスから帰ってきた私は当時の富田園長からポスター掲示をしなかったことについて「あんたは子ども達に選択する権利を与えないつもりか!!!」と怒鳴られました。「ひどい…そんなつもりはこれっぽっちもなかったのに。急いでバスに乗ったから、ただ掲示し忘れただけなのに…」と、自分の失敗を反省するよりも、怒りと悲しみが込み上げ、その一言が私の心に深く刺さりました。しかし、その一言が私にとっては忘れられない戒めとなり、それ以降、計画を立てて行動すること、そして当日の準備は前日までにしっかり終わらせておくということを実践するようになりました。

 

子どもからのひとことが胸の奥深くに響いたこともありました。

幼稚園教諭として7年程経った年長担任時代。クラスに自分の思う通りにならないと「こんな幼稚園なくなればいい!壊してやる!」と泣き叫びながら大暴れをする男の子がいました。毎日そのような様子が何度となく見られ、その子にどう向き合えばよいか悩みながらの日々でした。そしてある時いつもと同じような状況になったため「T君。先生は毎日毎日T君のことをこうやって怒りたくないよ。こんなふうに先生に怖い顔で怒られるのはT君だって嫌だよね。先生は怒ってるT君よりニコニコのT君の方が好きだよ。T君だって怒ってる先生とニコニコの先生だったらニコニコの先生の方がいいでしょ?」とT君にわかってもらいたい気持ちを伝えました。すると、泣き暴れていたT君がピタッととまり「え…違うよ。僕は怒っている千春先生もニコニコの千春先生もどっちも好きだよ」と。私は自分が受けたその時の衝撃を今でも忘れられません。『私は今までこの子の何を見てきたのだろう。私は先生失格だ。いつの間にかこれまで大人の思うように動いてくれるT君を求めるばかりで丸ごとのT君を受け止められないでいたんだ。むしろT君の方がありのままの私を受け入れてくれていたんだ…』と。そのT君の一言が、のちの私の子ども達へのかかわり方を大きく変えてくれたのです。

 

先に書いた、富田先生からのパンチの強い一言がなければ、責任をもって仕事に向き合うことの大切さを感じることはなかったかもしれませんし、T君のあの一言がなかったら、今でも大人の思うような価値観ばかりを子ども達に押し付けていたかもしれません。

未熟な私をこの二つの言葉が違う分野で成長させてくれたと思っています。そして何十年経っても忘れられない言葉として私の心に残っています。

もちろん心地良い言葉の方が心が満たされますが、時に心の深いところに重たく響く言葉も、長い目で見ればその言葉が戒めとなり今後の自分の成長につながることもあるのです。

そして「笑顔の先生も怒っている先生もどんな先生だって好き」と言ってくれたT君のおかげで、物の見方や子どもの見方の視点が変わり、子ども達に対する接し方も大きく変わりました。その頃から、子どもとの関わりに正しい答えはなくひとりひとりに沿った対応が必要なことや子どもの丸ごとを受け止めること、そして子どもだからといって大人の価値観を一方的に押し付けてはいけないということを頭での理解ではなく、心で感じとりました。

 

言葉のもつチカラ。

それは、人を変えうるチカラにもなるのですね。

 

今年ももうすぐ終わりです。新型コロナウイルスが全国的にも広がってきておりますし寒さも本格的になってまいりました。いつもと違った年末年始になるご家庭も多いかもしれませんが、どうぞ健康で穏やかな時を過ごせますように。

 

 

園長   伊勢 千春

 

 

 

 

© めるへんの森幼稚園. All Rights Reserved.