園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2019年09月05日

毎年夏休みは時間に余裕ができるため、普段昼休憩も全く取ることのできない(むしろ給食の時間が一番大変な時間ともいえるかも…)先生達にも夏休みをとってもらっています。夏の研修会参加の傍らそのような時間もとり、先生達自身も少しでもリフレッシュして二学期からまた良い保育ができるような環境作りに努めています。

そんな中、私も夏休みをとり、今年は大阪や京都に行ってきました。とはいっても、第一目的は観光ではなく、娘の高校のダンスの大会応援のためでした。高校のダンスの大会はいくつかあるようですが、娘の高校が毎年力を入れて全国大会出場資格を獲得している大会があり、その大会に今年も出場することができました。現在娘が通っている高校ダンス部は、以前世界大会で2位になったこともあり、このような成績を積み重ねていることを知った娘は、「この学校に入って自分もダンスで全国大会に行きたい!」 という思いで選んだ高校でした。ですから部活が引退となる今年は何が何でも勝ち取りたかったようです。

全国大会に行けると決まった後、娘に 「どうする~?世界大会にいけたら~」 と声をかけると 「あのさー上には上がいるんだから無理に決まってるじゃん。東北代表にはなったけど東北地区は全国的にもレベルが低いし、全国行くことが目標だったから行けただけで満足だし」 という答えが返ってきました。それを聞いた昭和世代の私の怒りスイッチがピーンと入ってしまいました。本当にお恥ずかしいですが、大人げもなく、 「でも実際、そんなレベルの低い東北地区から先輩達は世界大会いけてるよね?! 最初からそんな気持ちで全国行くなら行くな。そんなふうに諦めて臨むのではなく、世界大会をもめざすぜ!くらいの気持ちで大会に臨め」 と…。おそらく子どもからしたら相当うっとうしい親に大変身していたことと思います。

娘と話をしていたり、最近の高校の話を聞いていたりすると、もちろん全ての高校生に言えることではありませんが、クールというか物事に向かう前から何かしらの言い分を並べ、自分の力や限界を決めてしまっているように思えてならないことがあります。今の高校生は自分の時とは違う、親子であっても個々であるから考え方やものの捉え方はそれぞれなんだ…と頭では理解して分かっているつもりでいるものの、どうしてもこのような場面になると、何か言わずにはいられなくなってしまいます。せっかく全国大会に行くのだから、それで満足せず、さらにいいパフォーマンスができるように大会まで残り二ヵ月を過ごしてほしい思いで娘に喝をいれたものの、後になっていろいろ反省することになりました。

大会が近づいてきたある日、部活から帰ってくるなり 「ダンス部だった先輩に今日観てもらったら、「入賞できるかもよ」と言われた!」と気持ちが上がっている雰囲気でした。「でも、〇〇や〇〇(一緒に踊るメンバー)は、「入賞なんて無理に決まってるじゃん」って全く本気にしてなかった…」と。

そこでハッとしました。

仮に娘個人のモチベーションが上がっても今回のダンスは個人競技ではないため、一緒に踊るみんなが同じ思いや方向に気持ちが向かわなければ、結果に結びつかないのが当然です。当たり前ですが子ども達も個々なわけで、個性もあればそれぞれが大学受験を控えている身でもあるため、もちろん本業の勉強だってあります。全国を目指すところまでは皆が同じ思いを持っていたようですが、全てにおいて同じ熱量で向かうのは難しいことです。大人の世界においても人によって物の考え方も捉え方も多種多様で社会経験をたくさん積んだとしてもそれをひとつの方向に持っていくのは容易なことではありません。ですからそのようなことも察した私は、最後は 「ひとりひとりが今持てるそれぞれの力を全力で出し切れたらいいね」 と言葉をかけると、娘からも 「うん。全力出す」 という返事が返ってきました。

 

大阪で行われた全国大会では残念ながら入賞はできませんでした。しかし娘の感想は 「全国に行って思ったことはいろんな経験を積むってすごく大事だと思った。レベルの高い他校をみて、もっとここをこうすればよかった、こんなやり方やこんな表現の仕方があるんだっていろいろ学べた。入賞はできなかったけど今後の自分にプラスになった」 ということでした。最後にそんなふうに思えたなら、きっと心の成長につながっただろうし学びにつながっただろうと嬉しくなりました。

 

最近、研修会や大学の先生の講話などを聴くと、とにかく失敗したくない、挑戦して結局できなかったり失敗したりするのは恥ずかしい、やってできないと心が折れる…だったら最初からやらない方が心が傷つかないで済むという若者が増えている。ヤル気がないわけではなくて傷つくことを恐れて最初から傷つかない道の方向に自然と心が向いているのではないかということです。

子ども達には可能性がたくさんあります。むしろ伸びしろしかないはずです。自分の力や限界を決めてしまうには早すぎるしもったいない。失敗の経験も挫折も恥ずかしいことではなく、むしろ必要なこと。だからそんなふうに恐れずに様々なことに目を向け前向きに物事に向き合い、たくさんの心の肥やしを増やしていってほしいと願っています。

そのために、親は先生は大人はそして自分は何ができるか。考えながら毎日を過ごしていきたいと思います。

 

さあ、運動会ももうすぐです。

年長児はクラスのみんなで心をひとつにして取り組まねばならない種目ももちろんあります。しかし、子ども達は同じ年齢であっても個性などにより個々によって運動会に向かう熱量も様々なことを理解した上で、皆でひとつのことに向かうことの大切さやそのような部分の心育ても丁寧に行っていきたいと思っています。そして、どうせできない、頑張ってもうまくいかないとあきらめてしまわず、たくさんの経験を積んでその先の喜びや達成感をその子なりに得てほしいと思います。

そして三学年とも、その子なりの楽しみかた、その子なりの頑張りかたができたらいいなと願い、子ども達に心の中でエールを送っている毎日です。

 

 

園長    伊勢 千春

 

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