園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2016年01月22日

今週月曜日は大雪からのスタートとなり、一気に東北の冬らしい風景に変わりました。そんな中、今週から劇あそび旬間に入り、一月いっぱい各クラスで劇あそびをとことん楽しむ期間となっております。

『劇あそび』・・・あまり聞きなじみのない言葉かもしれません。通常、学校や幼稚園で行なう学芸会や発表会では劇が主流だと思います。

劇では「そのセリフ、もっと大きい声で言わないとお客さんに聞こえないよ」とか「ここまで前に出て正面を向いてセリフを言ってね」、あるいは「○○ちゃんは△△ちゃんの次にセリフを言うよ」など、決められた流れの中で見ている人に伝わるようにセリフを言うのが普通で、練習をしなければなりません。

学校での学芸会のねらいや意味はもちろんきちんとあって、そのような中で劇が位置付けられていると思います。

大勢のお客さんの前で自己を表現することや、責任を持ってそれぞれの役割を果たすこと、そして、個々が役割を全うすることで一つの作品が出来上がるという、そのような経験は必要なことだと思います。

しかし、当園ではあえて 『劇』 を行なわず、『劇あそび』 を発表という形態をとらずに取り組んでいます。

ではなぜ、このような形をとっているのか。

 

『劇あそび』 は 劇ではなくあそびととらえています。

本来、幼児にとっては生活そのものがあそびのはずです。絵を描くのも歌を歌うのも、絵を描いてあそんだり、歌あそびしたりという感覚です。しかしこれをやり方次第では、絵を描かされる…歌の練習をしなくちゃいけない…というような感覚で子ども達がとらえてしまい、中にはやりたくない―…キライー…という子が出てきてしまうのです。

幼児期の子ども達は、もともと 『ごっこあそび』 が好きなはずです。男の子だったら戦いごっこやヒーローごっこ、女の子もお店屋さんごっこやレストランごっこ…。いずれにしても、テレビで見ているもののマネや、スーパー、レストラン、病院など実体験をもとにしたごっこあそびが子ども達のあそびの中には溢れています。

最初はマネから始まりますが、しだいに自分でもっと面白くしようと考えたり、こうなったら楽しいかも!と想像したり創造したり…そんなあそびの中でオリジナルの工夫がうまれてきます。

 

めるへんでは開園当初から

自分の頭で考え、なんでも意欲的に進んでやろうとする心や態度を養っていくことを大切に考えてきました。

この劇あそびをすることで

1、「楽しそう!」「やってみたい!」という積極的な心が起こり

2、「ここはこうしたらもっと面白くなりそう!」という工夫や創造する力がうまれ

3、「ここはどうしたらいいかなー」とみんなで相談し、人の意見やアイディアに耳を貸したり聞き入れたりする協調性が養われ

4、日常の会話の中の言葉(語彙)も増え

5、言葉の表現力がつき自分のアイディアが取り入れられたことや認められたことで自信もつき、より意欲的な行動が身につく

・・・というようにさまざまな総合的な学びができると考えています。

最初の方で述べたように、『劇』 という経験もゆくゆくは必要になっていくと思います。しかし、「間違ったら大変!」「セリフ忘れちゃったらどうしよう」「うまくできなかったら恥ずかしい」という思いが、今まだこの年齢の小さい子ども達の身に降りかかってしまったとしたら、楽しいはずの 『あそび』 が緊張で身がすくんでしまうものになってしまう可能性もあり、いったいなんのために、誰のために劇をやっているのか分からなくなってしまうかもしれません。

ですから今の時期は、自分達で考え、楽しいことや、そのお話がより面白くなるようなアイディアを子ども達が出し合い、聞き合いながら創造の世界・想像の世界をとことん楽しんでほしいと思っています。

保育室内の自分たちの身近にあるものを使って工夫したり、何かに見立ててあそびに取り入れたり。

例えば鉛筆を注射に見立てる子がいたり、椅子をたくさん並べて家の囲いを作ったり、小道具が必要だと思ったら自分の自由画帳とクレヨン、ハサミを持ち出して作り始めたり・・・。このあそびの最中は保育室内がとんでもなく散らかった状態に見えます(笑)。でも、決してただ散らかっているのではなく、子ども達のやりたいことが溢れている環境になっているのだと私は思ってみています。

こんなふうに自分で思いついたことをすぐにあそびに取り入れられる環境だからこそ、どんどんアイディアもわいてきてあそびがより楽しいものになり、もっとやりたい!という意欲がわいてくるのだと思います。

だいぶ前は劇あそびをステージ発表していましたが、たくさんの話し合いを教師間で行ない、子ども達の心の育ちにとって一番ベストな形はどのようなものか・・・ということを模索した結果、子ども自身がとことんあそび、とことん楽しみ満足できるものを取り入れていくという子ども目線の現在のようなスタイルになりました。

このように私達は 『劇あそび』 にそんな思いをもって取り組んでいます。

たくさんの想像力や創造力が備わったその先には、きっとまた新たなその時必要なチカラが子ども達には備わっていくだろうという願いを込めて・・・。

だから 『劇あそび』 は、めるへんの保育の中でも大きなこだわりのひとつです。

 

園長   伊勢 千春

 

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