園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2020年11月24日

運動会を経験し、子ども達も身体を動かすあそびに率先して取り組んでいます。

今、年少年中では鬼ごっこがブームのよう。

特に年少さんでは鬼にタッチされたら両手を上にあげて頭の上で手のひら同士を合わせバナナの形に変身する『バナナ鬼』が人気のようで、担任や他クラスの友だちを問わずたくさんの先生や友だちと園庭を駆け回っています。先生も子ども達も笑顔でバナナ鬼しているところがとっても印象的。運動会の後、随分といろいろな友だちとの関わりを楽しんでいるように見受けられます。そして簡単なルールのあるあそびも理解しながらあそんでいるようです。1学期の最初の頃には想像できない姿です(笑)。

そして年中さんの鬼ごっこ。

警察と泥棒に分かれる『けいどろ』や鬼に捕まらないように〇や△などの家に入る『かたちおに』と、様々な種類の鬼ごっこを楽しんでいます。鬼に捕まらないように…というのはどれも同じですが、鬼ごっこの種類によってルールが異なるため、同じ鬼ごっことはいえあそびの楽しさはそれぞれです。年中さんの鬼ごっこは年少さんと比べて、逃げるスピードや追いかける鬼のスピードが違い、勢いも全く違います。年少さんは先生や友だちとわちゃわちゃしながら逃げたりタッチしたりするのを楽しんでいるようですが、年中さんはひとりひとりが捕まらないように工夫したり鬼の様子をうかがいながら友だちを助けるために力を注いだりと、鬼ごっこひとつをとってもこのように発達の段階によって違うあそび方になっています。

そして年中は運動会の景品でもらったとび縄を使って縄跳びの練習をしている子ども達もよく見かけるようになりました。何度失敗しても「もう一回見てて!」「もう一回見てて!」と果敢に縄を回し練習する子もいれば、近くにいてじーっと飛んでいる様子を見ている子も。「Hちゃんもやってみたら?」と声をかけると「だってやったことないからできないもん」と興味はあるようですがまだチャレンジするところまでいっていない様子。いろいろなタイプがいます(笑)。

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また、年長はサッカーやドッジボールなどの運動あそびが盛んになってきました。

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鬼ごっこよりもさらに運動らしくなり、ボールを投げる、蹴る、作戦を立てるなど高度になってきていますが、子ども達は新しく出合うあそびに夢中です。

ドッジボールをやっていた年長さんをみていたら、外野にいたM君が飛んできたボールを追いかけましたが、ほかの子の方が早くボールに追いつきあそびが進んでいきました。するとM君が「おれが投げようと思ってたボールだったのに」と泣きながら最初にボールに追いついた友だちに怒りをぶつけていました。しかし周りにいた子が「でもさ、今〇〇君の方が先にボールとったからしょうがないよー」と声をかけると、より一層怒りながら悔し泣きをするM君でした。私も近くにいたため、「Mくん、泣いているよりも次のボールを追いかけた方がいいんじゃない?そうしたらM君だってボールを投げられるチャンスがまたできるよ」とはっぱをかけると頷きながら涙を拭いてまたすぐにゲームに参加し始めました。

運動あそびから少し話はそれますが、先日、若手の先生の鬼ごっこの指導案を見る機会がありました。指導案の『予想される幼児の姿』の中に「鬼に強くタッチされて嫌がる幼児がいる」と書かれており、それに対する教師の配慮点として「強くタッチされて嫌だった自分の気持ちを相手に言葉で伝えられるよう声がけをする」とありました。『自分の気持ちを言葉で相手に伝える』ということは、日々の保育の中で大事にしていることなので、しっかりそのような積み重ねをする保育ができているのだと安心しました。その一方で少し考えさせられる部分もありました。年少の学年ではないため、鬼ごっこを夢中で楽しんでいれば、走るスピードや勢いだってあります。そうであれば、いわゆる『いじわる』で強く押した、たたいたとは全く意味の異なるある程度の強いタッチになることだってあるだろうと思いました。ですから強いタッチが悪いことをしたかと言ったらそうではないし、もし仮に「強くタッチされて嫌だった」「もっと優しくタッチしてほしかった」とタッチされて嫌だった子が自分の思いを伝えることができたとしても、逆に言われた側の一生懸命鬼になって追いかけていた子の想いはどうだろうとふと思いました。そして「強くタッチしてごめんね」と謝らなければならないのか、どのくらいの強さならいいのか、そこに気をつかいながら鬼役をやって本当に鬼ごっこに夢中になって楽しめるのだろうか…と考えさせられました。もちろん、なかなか勢いに慣れていない子もいますし、鬼に優しくタッチされたとしても捕まったこと自体が嫌で泣く子もいます。そのような子達に寄り添い、思いの共感をしていくことも私達の大事な仕事ですが、その子自身も心のたくましさを持ち得ていけるような援助をしていくことも別な視点からの私達の援助のひとつだろうと思った出来事でした。そうであれば、この時の教師の配慮点は少し変わってくると思います。タッチの強弱で意地悪されたというような認識だけを持ってしまわず、本来の鬼ごっこの面白さや楽しさにも目を向けていけるような配慮にも努めていきたいと改めて思いました。

そういう意味では外野でボールをとれずに泣いていたM君も、まだ縄跳びをしたことがなく「できない」と思ってチャレンジしていないHちゃんも、少しずつでも前向きな気持ちが芽生え、チャレンジしたり次に気持ちを切り替えたりしていけるような援助が行えるようにしていきたいと思います。

子ども達への寄り添い方や援助は一方向からだけでなく、多方面の角度から見ていく必要があり大変難しく奥深いものです。ですから、子ども達同士のトラブルなどにおいてもその一部分だけを切り取ってみるのではなく多方面からの見方が必要になってきます。見極める力やその時々の最善の援助を模索しながら今後も子ども達にかかわっていきたいと思います。

 

 

園長    伊勢 千春

 

 

 

 

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