園長室から

目的を見つめ直す

6月13日の河北新報朝刊の記事に『活動目的 見つめ直そう』というタイトルの記事がありました。

新型コロナウイルス感染拡大でスポーツに打ち込む多くの子ども達が目指してきた大舞台が中止に追い込まれ、今も制約の多い環境で練習を続けています。親や指導者は子どもにどう接すればよいのか。高校のサッカー部監督や大学教授、合わせて3名の指導者や専門家の意見が載っていました。その中でなるほどそうだなと思え頷けるところが多々ありました。

仙台大体育学部の菊地教授は、大切なものを奪われ喪失感を抱いた子ども達に「次に切り替えて」と望んだり言葉をかけたりするよりも子どもが思い悩む時間を焦らず見守ることも必要と述べ、柳のようにしなやかで強い回復力を養う機会になるといっています。脳は言葉に素直であり、マイナス思考に陥った時は「大丈夫」「まあいいか」など自分に言い聞かせ、不安を消す「言葉の技術」も覚えておくとよいと綴っています。

また、関西大人間健康学部の神谷教授によれば、部活動運営の課題を見える化する研究を行ったところ、中学高校の多くの部で様々な面において監督や顧問が意思決定している実態があったと報告しています。大会の好成績に短距離で近づくためには指導者が示す効率的な練習だけが重視されがちで生徒自身が問題解決に知恵を絞る機会が失われているとみているようです。社会に出れば周囲のおぜん立ては期待できないため、指導者や保護者は子どもの自治や意思決定を尊重してほしいと言っています。子どもには挑戦する権利も失敗する権利もあり、無駄や遠回りでも自立のために待つことが大事と締めくくっています。

そして、常盤木学園高校サッカー部の阿部監督は、自粛期間に改めて「目標」ではなく「目的」について生徒たちに考えさせたといいます。サッカーで日本一になることは確かに大事な目標かもしれないが、社会に役立つ人間性を磨き、自分の中に芯をつくるという部活の大きな目的の一部にすぎないといい、生徒には器を広げ、将来をデザインする力を身に付けさせることを心がけたいと述べています。

中高生を持つ親でなくとも、子ども達にかかわる私達教師や親にも通じるのではという内容のように感じました。3名の先生に共通して言えることは、この状況が子ども達にとって成長できる機会と捉えていることでした。

 

今年はコロナウイルスのことがあり、たくさんの制限があったり行事や大会が中止になったりしているため、どうしても子ども達がかわいそう…と思ってしまいます。私も幼稚園の行事などを考えるにあたり歯がゆいこともたくさんもあります。子ども達だけでなく、本来ならば保護者の方にも子ども達の普段の様子を見ていただいたり保育室にも足を運んでいただいたりし、子ども達の絵画や作品にも触れることで子どもの成長を一緒に喜び合いたいと。しかし、現在一番大事なことはと考えると、やはり子ども達の生活を第一優先に考えることです。コロナウイルスは子どもからというよりは大人から感染が多く広がっている状況のようですから、大人の出入りを縮小せざるを得ない状況です。

河北新報の今回のこの記事のタイトルにもある『目的を見つめ直そう』に添ってシンプルに考えてみると、今の当園の目的は、子ども達から幼稚園というあそびの場(学びの場)が奪われることなく継続できることであり、この幼児期に必要な子ども達が経験すべき日々の活動をできるだけ体験させること。そして、それらの日々の経験の中から子どもたち一人ひとりの心の根っこを育んでいくこと。これこそが一番の目的です。

であるならば、その目的を達成させるためには、まずはこのまま1学期が終了するまで保護者の方々には幾分かの制限を強いてぐっとこらえていただくことをお願いしていくことになります。どうか引き続き趣旨をご理解いただき、ご協力をお願いします。

今年の子ども達がいろいろな経験ができなくてかわいそう…で終わらせたくありません。そうではなく、このような状況の中でもこんな経験ができたという今のベストを模索しながら夏休みまで一日一日を大事に保育していきたいと思っております。

そして、現在のこの状況下が今回のこの記事の先生方がおっしゃっていたようなことが育まれる機会になるように私達大人の意識も変えていけたらと思います。

 

 

園長   伊勢 千春

 

 


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