園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2020年03月17日

年長の子ども達が巣立つ日になりました。

93名の年長めるへんっこのみんな、卒園おめでとう

三月になってから長い休みが続き、卒園式ができるだろうか、子ども達の姿を保護者の皆様に見ていただけるだろうかと毎日心配していました。新型コロナウイルスの状況が日々変化し、経験したことがないだけに社会全体も先の見通しがなかなかつかない状況のため、なおさらでした。休園措置や卒園式の実施も決断した後に状況が良い方向に変わるかもしれないし悪い方向に変わるかもしれない、そんな先の読めない中ではありましたが、たくさん話し合いたくさん考えて「よし、卒園式は絶対やろう」「保護者の皆さんにも子ども達の立派な姿を見てもらおう」と決めました。

なぜなら、入園したばかりの頃、あんなに泣いて幼稚園に来ていた子、恥ずかしくておはようが言えなかった子、みんなと一緒に行動するのがちょっぴり苦手だった子、そんな子ども達が、今こうしてこんなに立派に成長したのですから。そんな子ども達の成長した姿を是非みていただき、たくさん我が子をほめてもらい、なにより保護者の皆さんと園とで卒園の喜びを一緒に味わいたかったからです。ですから、今日こうして無事卒園式を迎えられて本当に嬉しく喜びでいっぱいです。

 

今回、長い休みになって分かったことがありました。それは幼稚園でいっぱい遊べること、友だちとたくさんかかわれること、こんなことはいつだってできる当たり前のことだと思っていましたが、そうではありませんでした。

9年前の三月、東日本大震災を経験した私達。その時にも同じような思いを味わっていたはずです。

これまでできていた当たり前のことができなくなったり、何気なく過ごしていた毎日すら送れなくなったり。だからこそ、日々の幸せを当たり前だと思わず、一日一日を大事に過ごし毎日を送れることに感謝しながら過ごしていかなければならないことを身をもって知ったはずでした。しかし時がたつにつれ、また日々の幸せのありがたさが「当たり前」になってしまっているかもしれません。日々のありがたさが当たり前になれば、相手への感謝の気持ちや謙虚さもどこか薄らいでしまうかもしれません。

学校に通えることのありがたさ、先生から勉強を教えてもらえることのありがたさ、給食センターの皆さんに子どもの昼食を提供していただいていることへのありがたさ。親の目線からだけでもまだまだあるはずです。

今の年長児を含め幼稚園の子ども達にも、今回のこの状況から何かを感じとり何かを学びとってほしいと願っています。

幼稚園でいっぱいあそぶこと、お友だちや先生とたくさんかかわること、そんないつもできていたことが突然できなくなってしまった今回。だからこそ、年長さんには学校に行ったら新しい友だちをたくさん作って多くの友だちと関わってほしいし、みんなで勉強したり遊んだりすることを楽しんでほしいと思っています。

ご飯が毎日食べられること、「いってらっしゃい」「いってきます」の言葉がうまれるひとりひとりの帰る場所があること、そして家族がいつもそばにいてくれることへの感謝の気持ちを持てる子になってくれたらとても嬉しいです。そんな何気ない毎日を送れることが何よりも幸せだということに、いつか気づいてくれたらな…と思います。

 

今回、年長有志の保護者の皆様がずいぶん前から卒園式後の『ありがとうの会』を企画し準備を進めてくださっていました。しかし卒園式自体も時間短縮措置を取らざる得ない状況だったため、やむなく『ありがとうの会』は中止としたので、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。そしてバスを利用していた年長さんにも最後のスクールバスの日を告げられず終わってしまったことや幼稚園生活最後の月に存分楽しませてあげられなかったことへの申し訳なさも相当ありました。そして年度末から新年度にかけ準備し進めていた全てのことがまた検討しなおしとなるなど、春がもう来ているというのに気持ちが上昇するような気配が全く感じられない多忙な数週間が続いているので、私自身かなり老け込んでしまったという自信があります(涙)。現に仕事から帰宅した私の顔を見て、娘が「どうしたの!?ママ!めっちゃ老けてる!!」と驚いている日があったくらいです…(涙涙)

しかし、この娘のひとことで目が覚めました!

これではいけない、落ち込んでばかりはいられない!保護者の思い、子どもの思いのその穴をどうやって埋めるか。埋めるどころかこの穴が盛れるくらい挽回するにはどうしたらいいか。今度はそんなことを毎日考えました。書道経験も幼い頃にわずかで全く自信はありませんが、卒園証書の名入れの一文字一文字にしっかり想いを入れて書き上げよう、卒園式自体は略式になるけれど子ども達の出番はしっかり確保し保護者の皆さんにお子さんの成長を存分に感じていただこう、卒園する最後の日は子ども達が毎日乗車したバスともしっかりお別れできるようにしよう、ありがとうの会で飾る予定だった保護者有志の力作もしっかり飾ろう、とにかく今できる思いつく限りを出し尽くそう!そんな想いで臨んだ卒園式でした。

『人の想いには想いで返す』

今回のコロナウイルスの件ではマイナスなことばかりが形として見えていたと思いますし、『想い』はなかなか目に見える形になりにくい。しかし、めるへんから巣立っていく子ども達と保護者の皆様から得たこれまでの学びに私達も精いっぱいの想いを返したい、そう強く思います。そしてこの想いは卒園してからもずっと、子ども達の健やかな成長を願いながらつないでいきたいと思います。

卒園する93名の子ども達のこれからが、自分の力で強くたくましく伸びていき、光り輝けるものになるよう心から願っております。

 

 

園長    伊勢 千春

 

 

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