園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2020年02月05日

先日、めるへんを卒園したWさんとSさん、そして在園中のOさんの三人が園長室を訪れました。

というのも、この皆さんは歌のサークル「コールめるへん」のメンバーで、皆さんの歌う曲の中には当園の初代園長富田先生が作詞されたものもありました。富田先生は児童文化にも大変精通していらしたので、私も本当に多くのことを担任時代学ばせてもらいました。そんな話をたびたびしていたこともあり、「富田先生の理念やめるへんで脈々と受け継がれてきたことなどを是非聞かせてもらえないか」というお話があったので、それはそれは是非!ということになったのです。

富田先生がいつも私達に口にしていたことは、「幼児教育は親の教育7割、子どもの教育3割」ということでした。『幼児期の教育は家庭教育が柱』とのことからです。どんなに子ども達を教育しても親の意識がどうあるかによっては何の意味もないことになりかねないと常々言われてきました。ある程度の経験も重ね、自分も母親になった今なら、その言葉の意味はよく理解できます。しかし、夢をもって幼稚園の先生になり希望に満ち溢れていた当時新任だった私にとっては驚きの言葉でした。私たち教師にとっても大変厳しい先生でしたが、保護者にとっても厳しく、今の時代に富田先生がいらしたら、どんな言葉をかけていただろうとふと思うことがあります。

人にものを伝える時の話し方、日本語の美しさを子ども達に伝えるためにはまず子どもに接する大人が正しい日本語を使わねばならないこと、そしてよその家や職員室に入るときは上着を脱ぐ、食事の時はファッション云々ではなく帽子をとるなど幼稚園教諭というよりは、人としての作法や礼儀などを、大人が普段から意識していくことが子ども達にとっても自然の教えにつながると教わりました。かなり厳しい教えを受けたり、たくさん叱られたりもしました。しかしその叱られたことがその後の私の保育に対する向き合い方や仕事に対する姿勢に大きく影響し、後に富田先生はきっとこういうことを伝えたかったのだろうと理解することができました。そしてその厳しい教えがなかったら今の自分の幼児教育に対する思考や子育てへの向き合い方は違ったものになっていたと思います。

現在のめるへんには富田先生の教えを受けた先生はほんの一握りになってしまいましたが、それがめるへんの教育の太い柱になっていますから、職員が入れ替わっても、何年たっても何十年たってもそれらの教えを脈々と先生達や保護者の皆さんに伝えていきたいというお話をさせてもらいました。そんな話の流れからWさんSさんOさんからも現在の小学校のお話など私も興味深いお話を聞くことができ、やはり昔の人の教えはすごいね…ということで全員納得。時代はどんどん変わって社会全体の考えや親の考え方も様変わりしているけれど、子育てに対しても人としても大事なことは時代の流れに流されずにしっかり見極めていきたいね…ということで話がまとまりました。

話の最後に、「お忙しい中、お時間をとっていただき~」といわれましたが「いえいえ『握ったらひらけ、ひらいたらまけ(撒け)』ですから」とお伝えし、富田先生が幼いころにおばあちゃんからよく言われ年をとっても忘れられないでいるとおっしゃっておられた、このフレーズを私も大事にしていることを伝えました。自分がもらったお菓子を周りに分け与えず独り占めしていた幼い頃の富田先生が、よくおばあちゃんにこの言葉を言われていたそうです。「自分の手に入れたものは握ったまま独り占めせずに周りのみんなに分けるものだ」という教えです。私もその言葉を聞いてからは、自分の伝えられることや得たことは自分だけのものにせずに周りの人と分かち合ったり共有したりしていこうと思い今に至ります。今回こうして皆さんとお話しできたことで私も得ることがたくさんあり、これからも人とのかかわりを持ちながら自分自身も豊かになれたらと思っています。そうしていくうちにきっと撒ける種も自然に増えていくのではないかと思います。

皆さんともぜひ機会があればいろいろなお話ができたらと思っております。日々の子育ての悩みでもどんなことでも、よろしかったらぜひお声をかけて下さいね。

 

 

園長    伊勢 千春

 

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