園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2017年01月20日

現在、めるへんでは劇あそび旬間に入っており、各クラスそれぞれがお話の世界を楽しんでいます。

私もクラス担任時代、この時期は一年の中でもっとも心身ともに疲労困憊する時期でした。なぜなら劇あそびは担任も本気でなりきり、とことんあそぶからです。

【劇】には台本があり、子ども達がいうセリフもしっかり決められるので先生は指導をし、人に見てもらうために立派なものを作り上げるというかたちになります。

しかし【劇あそび】は人にみせるものではないし、全くねらいが異なります。

劇あそびでは子ども達が本来持っている想像力をフル回転させ、言葉の表現も自由な発想でいいのです。だから間違いとか失敗は劇あそびにはないのです。

子どもは想像の世界やうそっこの世界であそぶのが大好きで、大人から見ればそんなわけないよね、とか、ありえないでしょと思うようなことが子ども達の頭の中では 「ありえる」 出来事になります。自分で想像したことがいわゆる劇で言うセリフのようなものになるのでどうストーリーが展開していくか全く予想ができない…ということも多々あります。そこが劇あそびの醍醐味でもあり、面白さでもあります。しかし、ある程度の共通認識をどうクラスのみんなで持っていくかということなどは担任の力量にもかかってきますので、先生達自身も毎日楽しみながらも悩みながら劇あそびを行なっていることと思います。

ここ数日、クラスをまわってみると、あちこちから猫の鳴き声がきこえてきたり、部屋にあるテーブルや椅子、パネルなどを使って動物の家を作りもぐって遊んでいたり。なんだかみんなワクワクして楽しそう♡

普段自分からあまり話しかけてこないような少し物静かな子も「今、魔女が来たんだよ」と教えてくれたり、「ここはネコのおうちだよ」「ここが玄関」など、お部屋に行くとたくさんのことを教えてくれたり。ひたすら「ニャ~オ」「ニャ~オ」とすり寄ってきて、私の体で爪とぎをするしぐさの子も。

廊下を歩いていても「どろぼうに○○を盗まれたんだけど、見なかった?」と、そのストーリーの中に入り込んでいるような言葉をかけられたり、「どこへ行くでござるか?!」と忍者に声をかけられたり、そのたびに私もその場の状況に合わせ、即興でなにかになりきって子ども達の想像の世界に参加しています。

この時期は普段の子ども達とまた違った一面を垣間見ることができ、見ている私も何だかワクワクします。この子はいつもニコニコ笑って友だちについていくタイプだけど、劇あそびになるとこんなにイキイキと自分の思いを口にするんだなーとか朝の挨拶はちょっぴりもじもじだけど、ねこの鳴き声はこんなに元気でビックリ!ということも。

毎朝登園バスから降りてくる子ども達を出迎え、おはようの挨拶をしていますが、昨日の朝は驚くことが。いつも私から「おはよう!」と元気に声をかけても気のない声の「おはよ~」の挨拶をとりあえず返してくれるYくんが、バスから走って降りてきて、私より先に「おはようでござる!!!」と元気に挨拶してくれました。その姿にびっくりしましたが、「おはようでござる!!」と私も挨拶を返し「手裏剣シュシュシュ!」と忍者のマネをしてみせると、Y君もにこ~っと笑いながら、手裏剣をシュシュシュと投げる真似をして走っていきました。Y君のクラスでは今、忍者になってあそんでいるようで、あんなに元気に忍者になりきり自分から挨拶してくれたのは初めてでしたから、なんだかとても嬉しくなりました。

自己を表現する力はこれからもとても大事になってくると思います。想像する力、言葉で伝える力、心を開放し表現する力、子ども達にはそんな力もあそびの中から習得していってほしいなーと願っています。

20年前の子ども達と今の子ども達を比べても、どこか少し大人びている子が増えてきているように感じます。しかし、いつの時代も子ども達は想像の世界を楽しむことができるはずだと思っています。

1本のえんぴつが時に注射器になり、時に体温計になり、時にぺろぺろキャンディにもなる。それが見立てあそびです。しかし「え、それ、ただのえんぴつじゃん」となってしまったらその場であそびは興ざめしてしまいます。ですからいかにそのあそびの世界を子ども達と一緒に作り上げるかは先生達の力量にもかかってくるのかもしれません。立派な道具を作らなくても、見ための形にこだわらなくても、子ども達が劇あそびの世界にのめり込んだら、1本のえんぴつは、もうただのえんぴつではないのです。そんな想像力を膨らませながら存分にあそべる環境がこの劇あそび期間中にできたらなと思います。

そんなところからスタートする劇あそびが、やがて年長にもなると想像の世界ではあるけれど、部分部分で本物に近づけたいという想いもでてきて、工夫が生まれたりあそびをより面白くリアルにするため自発的に小道具作りなどが始まったりするのです。ですからこうして考えると、本当に子ども達の成長ってすごいなーと痛感します。

子ども達に負けない頭の柔軟さを持ちながら、来週も想像の世界を先生と子ども達とで一緒に楽しめたらいいなと思っています♡

 

 

園長   伊勢 千春

 

 

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