園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2016年02月12日

前回の話題でもふれた、子ども達がお母さんからの叱られ方で、嫌だと思う叱られ方。その中の一つ、『良いことをしようと思ってやったのに、失敗してしまった時叱られるとすごく悲しい』という子どもの心の叫び…。

私のしくじりはまさにこれに当てはまるものでした。

記憶に新しい私の失敗。

今年度は、公開保育に向け、帰りが夜の9時~10時になってしまう時期がありました。毎日私が大変そうにしているのを中学2年の娘も察していたことと思います。その日も帰りが遅くなって帰宅し、玄関を開けるとほんわり味噌汁のいい匂い。台所へ行くと娘が部活から帰ってきたそのままのジャージ姿で味噌汁を作っていました。「ママ。味噌汁作ったよ」と弾む声。「あのね、冷蔵庫にナスがいっぱいあったからナスの味噌汁にした♪でも、ナスのあくを何分くらい水につけてとったらいいか分からなかったから、おばあちゃんに電話して教えてもらった!おばあちゃんが、あれば豆腐と油揚げも入れるとさらに美味しくなるから冷蔵庫見てみたらいいよ。って教えてくれたから具だくさん味噌汁になっちゃった♪」とピッカピカの笑顔で話してきて、「ママ!味見して!」と…。

味見してみると、ちょっぴり薄味でしたが、でもやわらかくて優しい味の味噌汁でした。一口の味噌汁で疲れも飛んでいってしまうような、そんなふうに心がほっこりしたのを覚えています。「んーいい味だね。ありがとう。今からやらなくちゃと思っていたからすごく助かったよ~」と感謝を伝えました。しかし、隣にある炊飯器の蓋を開けた瞬間、中が空っぽだったことに驚きました。私の中では、味噌汁ができているから当然ご飯も炊けているだろうという思い込みがあったのです。「ちょっと~ご飯は炊いてなかったの~?!」ナスのあくをとっている時間、ゆでている時間があったら、その間にお米を炊飯しておく…ということがなぜ頭の中で計画できなかったのだろう…というちょっとあきれた気持ちに変わってしまい、そこから私の説教が始まってしまったのです。いつのまにやら、「あのさ~、計画を立てて効率よくやるっていうのは、勉強も同じでしょ?だから勉強も…」と、味噌汁とは全く関係のない勉強の話にまで発展してしまいました…。

子どもが嫌がる「必要なことだけ言えばいいのに、去年の事まで持ち出しクドクドお説教されると頭にくる」のようなことまでプラスしてしまった始末・・・。

味噌汁の味をみて♪…と私の顔を見た時の娘のピカピカ笑顔が一瞬でさっーと凍りつき、「ごめん。気が付かなかった」と一言言って部屋へ入ってしまいました。この日はその味噌汁を娘と味わうことが残念ながらできませんでした。今思い出しても、本当にひどい話です…(涙)。

考えてみれば娘はただ、最近、母の帰りが毎日遅いしちょっと大変そう…きっとそんな私の姿を見て察し、少しでも私の帰宅してからの家事を減らしてあげたい…と思ってくれたに違いありません。味噌汁だけでも作っておけばママも少しは楽になるだろう…純粋にただそんな気持ちで作ってくれたのだと思います。そして、わざわざおばあちゃんに電話をし、ナスのあくもしっかりとって、美味しい味噌汁になるために具も増やし…と、この味噌汁を作るまでには少し大げさかもしれませんが、本人なりに小さなドラマがあったのだと思います。なのに、こんな結末になってしまったのです。想像すればわかることなのですが、ついその場で思ったことをすぐ口に出してしまって失敗した、私のしくじり体験です。

この後私は娘に自分が悪かったことを謝りました。大人でも間違ってしまったり、子どもにとって悪いと思ったことをしてしまったりした時は素直に謝る…これは徹底しています。大人だから全て正しいということはもちろんないですし、それは子どもにだけではなく、家族にも同僚にもです。年齢や上下関係などは全く関係なく、自分を顧みた時に足りなかったと自分で気づくところがあれば、素直に謝ったり、思いを伝えたりしています。ですからこの日のことも娘に自分に欠けていたことを伝え、謝りましたが、今でも私の中では苦い思い出として残っています。

口に出す前にもう少し「相手の思いを想像する」…ということをしていれば…という思いです。でも、この失敗してしまったことを忘れずに意識していけば、このような理不尽な思いを子どもがする回数も少しは減るのではないかと思います。

こうしてどんなに子どもに関わる仕事を何十年もしていても、母親としてはこんな失敗を繰り返し、そのたびに自分を振り返りながら子育てしています。子どもを育てているようにみえて、実は自分が人として成長させられているように思えます。どんなお母さんでもきっとそんなこと、あるのではないでしょうか。

「親が育てば子どもも育つ」「子ども育ては親育て」

…だからめるへんでは、【子どもも親も教師も共に育つ幼稚園】を目指しています。失敗を失敗に終わられてしまわず、逆に自分が成長していけるためのヒントにかえていけたらいいなーと思う毎日です。

 

 

園長    伊勢 千春

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