園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2016年02月24日

「おはよう」

たいていの人が一日の始まりの第一声はこの言葉から始まるのではないでしょうか。

私もそうです。

朝起きて、まずは家族と。そして出勤時に出会う近所の方や小学生と。そして職場で・・・。

朝は極力早い時間から園庭にでて、登園してくる子ども達を出迎え、ひとりひとりに挨拶をしようと心がけています。

「この子はいつも元気だなー」 「あれ?今日はしょんぼりしているな」 「お!久しぶりに顔見たなー。風邪が治ったんだな」  などなど。

出迎えていると、子ども達のその日の朝の表情や雰囲気がつかめます。

元気いっぱい「おはよう!」と挨拶をしてくる子もいれば、「みてみて!新しい靴!!」と挨拶そっちのけでピカピカの靴をぐんと前に出してくる子、「おはよう~」とてのひらを出すと、「おはよ」と小さな声で私のてのひらにソフトタッチをしてくる子、様々です。

「挨拶」は一番身近なコミュニケーションですから欠かさず行ないたいし、出来ることならみんな元気に挨拶してほしいなーと思っています。現にたいていの子は「おっはよー♪」「おはようございます」と挨拶できます。

しかし全ての子ども達が元気よく、しっかりした挨拶を…というのはなかなか難しいことだと思います。

【くまのこうちょうせんせい】という絵本の中でもそのようなことが載っています。

この絵本は、ずっと「挨拶は大きな声で」と思っていたくまの校長先生が、自分が病気になり大きな声が出せなくなって理由は違えど大きな声を出したくても出せない子もいるのだ…ということに初めて気付く、という内容です。大きな声で挨拶したくても出来ない子もいるし、ドキドキしたり勇気がいることだったり…。

もちろん、挨拶をしなくてもよいということではなく、個々にはそれぞれの個性やペースがあるのだと思います。

私も毎日「おはよう」と出迎えている中には、今年度に入り、まだ一度も「おはよう」という挨拶を交わせないでいる子がいます。担任や関わりのある先生にはたくさんおしゃべりをするという話を聞き、私もいつかこの子の「おはよう」を自分の耳で聞きたくて、毎日「おはよう!」と笑顔をむけています。ある時その子がおでこに大きな絆創膏を貼って登園してきたので、「○○君、どうしたの~?怪我しちゃったの?」とおはようの挨拶もそっちのけでおでこをなでなでしたら、小さな声で「昨日階段で転んじゃった」とかえしてきました。私とその子の初めての会話がこれでした。ようやく私とも言葉を交わしてくれた!と感無量。しかもそれがつい最近の出来事…(笑)。朝、スクールバスから降りてきて、その子のおでこに貼ってある絆創膏が小さくなるたびに、「おはよう。あ、絆創膏小さくなってきたね。治ってきたのかな。もうちょっとだね」と声をかけていたら、最近になって「もう治ったよ…」とバスから降りてきて私の前に来て、小さな声でそう報告してくれました。「本当だー良かったね~!」とムギューとすると、ちょっと迷惑そうな顔をしてクラスへ向かっていきました(笑)。この子とはまだ「おはよう」という言葉は交わしたことがありませんが、私の中ではもう交わしたことになっています。今は「おはよう♪」とてのひらを出すと、ポンっとタッチしていくからです。

 

話は少しそれますが、出勤途中の横断歩道に毎日同じ地域ボランティアさんが立って下さっています。子ども達が学校へ行く時間帯に大雪の日も雨の日も夏の暑い日も立って下さっており、子ども達の横断の際に旗を出して安全に横断できるよう見守って下さっています。私は車で通るだけですから、声を出して「おはようございます」の挨拶を交わしたことがありませんが、ありがたいなーという思いがいっぱいで、感謝の気持ちを込めて運転しながらおじぎだけは必ずするように心がけています。ボランティアさんも会釈してくださいます。

声は届かなくとも、感謝の思いだけは伝えたいという、私なりの朝の挨拶です。

ですから、みんな一律の元気な挨拶だけが決して全てではないような気がします。個々に表現の仕方も違うしペースも異なって当たり前。今はまだそんなふうでも、でもいつかは「おはようございます!」と元気に挨拶ができる時がくるといいなーという心の中では小さな願いをもって挨拶しています。

保育は全て願い。

こんなふうになったらいいなー、こんなことができるようになったらいいなー、こんな子に育ってほしいなー。という、全てが願い。

だから私は今日も元気に 「おはよう!」 と子ども達に挨拶しています。

 

 

園長    伊勢 千春

 

 

~PS~

上記で触れた絵本【くまのこうちょうせんせい】は本当のことをもとにしたお話です。ちょうどこの絵本を思い出して手に取る機会が今回あったので、この校長先生が題材となった【いのちの授業~がんと闘った大瀬校長の六年間~】という神奈川県新聞報道部の著書を今読んでいるところです。

 

 

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