園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2020年01月24日

今週から劇あそび旬間(二週間)が始まりました。

もしかすると、誰でも『劇』は想像できますが、『劇あそび』は馴染みがなくなかなかイメージのわかない方もいらっしゃるかもしれません。

『劇』には台本があって子ども達のセリフも決められ、観客にみせることが前提にあります。発表するために先生は立ち位置や声の大きさなどを指導し、練習をし、立派なものを作り上げる、それが『劇』です。劇は大勢のお客さんの前で自己表現することや責任をもってそれぞれ自分の役割を果たすことで一つの作品をみんなで作り上げることにもなり自信にもつながると思うので、そのような経験がいつか子ども達にも必要になるだろうと思います。

しかし、幼児期に育てたい部分はそのような部分とは少し異なり、あえて『劇あそび』にこだわり活動に取り入れています。

本来、幼児期の子どもたちはごっこあそびが好きで架空の人物になりきってあそぶお姫様ごっこやヒーローごっこ、または実体験をもとにしたお母さんごっこやレストランごっこなど子どもたちのあそびの中には様々なごっこあそびが溢れています。最初はマネから始まりなりきりってみたり、見立てあそびをしたり。たかが『ごっこあそび』ですが、なりきることで表現力が身に付き、見立てあそびをすることで想像力も芽生えてきます。例えば、一本のえんぴつが体温計になったり注射になったり、魔法のステッキになったり。その時々で必要なものに見立ててあそびの中にすぐに取り入れあそびが進んでいくのです。魔女や狼から隠れるための家だって普段使っている園児椅子で囲いを作り家に見立てているうちに玄関となる扉が欲しくなり、段ボールを平たくして立ててみるなど次第にアイディアが出たり発想がうまれたりしていき、自然にあそびがより面白くなって子どもたちもそのごっこの世界にすーっと引き込まれていくのです。その延長線上にあるのが劇あそびです。

劇あそびではそのごっこあそびにストーリー性が加わり、ちょっとした事件やハプニングが起きるとさらに楽しいものになります。そして保育室のみならず廊下や他クラス、園庭や場合によっては風の子公園と劇あそびの舞台はとどまるところを知りません。そんな状況なので、他クラスが楽しんでいるあそびになにかしらの影響を受け、それがヒントになってあそびが大きく変わったり想像が果てしなく広がったりしています。このように劇あそびは進んでいきますから、常に子ども達はドキドキ感やワクワク感に包まれていると思います。

このような経験をすることで、言葉での表現も増えて友だちとのコミュニケーションにもつながり、想像力や工夫する力、アイディアのひらめきや思考力も養われていくと考えます。自分たちであそびに必要なものを考えて作る子も出てきますから、創造力にもつながっていくはずです。

決められたストーリーであそび、決められた大道具や小道具を作るではなく、子ども達のあそびの展開に沿った子ども達オリジナルのストーリーが自然に出来上がっていく…そんな魅力が劇あそびにはあるのです。

こんなふうに進んでいくのが劇あそびの醍醐味ですが、先生たちはきっと頭の中がてんてこ舞いなはずです(笑)。予想もしない方向にあそびが急展開することだってあるし、クラスである程度今のあそびの流れ(ストーリー)を共有しなければならない。なぜなら劇あそびに対する子ども達の興味の向き方やかかわり方はひとりひとり違うからです。劇ならばひとつの方向に向かって今何が行われているかきっと全員が内容を把握するのはある程度容易なことだと思います。しかし劇あそびは子ども達の感性と想像力に沿いながら進んでいくのでストーリーを整理しようとする担任は大変になってきます。しかし、この経験によって子ども達ひとりひとりの何が育つか、何を育てたいかという根底の部分を見失わず、劇あそびを通して育つ力が、ひとりひとり緩やかにでもよいので育ってくれたらいいなーという願いを込めて保育に当たっていければよいと思っています。

全ての教育は『願い』のもとに

『こなす』教育ではなく、この子のここがこんなふうに伸びていったらいいな、この子のこの部分がより豊かになればいいな

そんな願いを込めて子ども達に寄り添う保育を来週も行いながら、あそびを深めていけたらと思います。

 

残念ながら今週インフルエンザによる学級閉鎖で経験できなかったクラスの子ども達にも来週思いっきり楽しんでもらいたいです。

 

 

 

園長    伊勢 千春

 

 

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