園長先生のつぶやき

心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。

2021年01月21日

めるへんならではの行事と言える劇あそび旬間(二週間)が今週から始まりました。一般的な保育機関で行われている発表会の『劇』とは、全くねらいや目的が異なるものです。

『劇』はストーリーが決められていてそれに沿ってセリフもしっかり決められています。しかし『劇あそび』はストーリーもセリフも一切なし。子ども達が好きな絵本や物語がモチーフになり、そのお話にクラスのオリジナルが付け加えられたり、絵本と絵本の二つのお話がいつのまにか合体して新たなストーリーがうまれたり。かと思えば、絵本や物語の要素が全くないクラス完全オリジナルストーリーであそびが展開されることも。

私達の目指す『劇あそび』は『劇』ではなく『あそび』ですから何が起こってもどんな展開になってもOK!…そう聞くと、発表もなければ子ども達は自由にあそべるのだから担任は楽なのでは…と思うかもしれません。ところが、実は全く真逆なのです。確かに子ども達は自由に想像を膨らませ、自分達が必要だと思う小道具を作ったり物を何かに見立てたりしながらどんどんあそびを展開させていき、のめり込んでいきますが、担任は話の収集役になったり仕掛け役になったりと大忙し!しかも教室でのあそびにとどまらず、ホールや園庭、他の教室や風の子と幅広い場所であそびが繰り広げられるため、担任は大忙しです。園全体がそのような状況になるため、自分のクラスには登場していない海賊や魔女、鬼やゴリラなど様々な役を楽しんでいる子ども達や先生に出会うため、その出会った人物がきっかけとなり話が思わぬ方向に発展していくこともあるのです。ですから、話をある程度集約しクラス全体に伝えていく伝達役にも担任はならなければなりません。

しかし、当の子ども達はといえば、このようにあそびが進んでいくため楽しくてしょうがないと思います。

年少さんは、椅子をたくさん使って家を作ったり電車やバスの座席を作ったりしながら見立てあそびを楽しみます。そして猫や犬など動物になりきって、何を聞かれても「ニャ~ニャ~」と全ての言葉が猫語?犬語?いう子も多数(笑)。このように、なりきるという表現力や物を何かに見立てるという想像力は年少の時期には大変必要なことです。

そして年中さんになると、その土台ができているため、今度はストーリーの展開を楽しむための創造性が増していくのです。なりきる力もさらにパワーアップ!一方で羞恥心も芽生えているため、例えば一本のペンを体温計に見立てている子に「それただのペンじゃん」と現実的なコメントをする子も出てきます。しかし、最初は何の役にもなりたくないとか「本物のオオカミがいるわけないじゃん、あれは〇〇先生じゃん」という少しクールな子も、園全体が空想の世界、ごっこの世界に包まれているため、その不思議な空気にいつの間にか巻き込まれていきます。最初は何者でもなくてもいいんです。好きな粘土あそびをクラスの片隅でしていても、おなかをすかせたオオカミ(担任)がそこを通りかかり、美味しいものをねだればお団子やおにぎりを作ってくれます。それを見ている周りの子達も食べ物リクエストをし、粘土あそびをしていた子はいつの間にかレストランのコックさんとして立派な一役になるのです。粘土あそびのコーナーにレストランの看板や手作りメニュー表ができたら、もうあっという間に劇ごっこの一員。そんな関わりがうまれるために、担任達は場の状況をとらえ、劇あそびに控えめな子ども達もうまく巻き込んでいきます。

さらに年長になると、見立てる…というよりも、より本物に近づけようとするため自分でストーリーに必要な小道具を作ったり細かい部分にもこだわったりしながらモノづくりの創造する力もどんどん広がっていきます。もちろん想像力も年少や年中から比べぐんとアップします。

この時期は園長室に来客がいる時でも、「園長先生!!ゴリラ見なかった?!外にさっきまでいたんだけど!!!」と、どど~っと子ども達が押し寄せたり園長室の大きな金庫を見て「あっ!!!こんなところにお宝の金庫があったぞー!!!」と金庫の扉のレバーをガチャガチャしたり…(苦笑)もはや子ども達の目には来客は入っておらず、あそびの世界に夢中です(笑)。先日も私が園庭に出ている間にお宝探しの年長児数名…もとい、海賊が数名、園長室の金庫の鍵を開けようとしていたらしく、「園長先生の部屋の机にいっぱい鍵があったから試してみたけど、どの鍵も開かなかった~!!!お宝の鍵はいったいどこなのー?!」と。嫌な予感がして「そのジャラジャラの鍵はどこにある?」と聞いたら「わかんない!!!よし!次に行こ~!」と…💦紛れもない私の車や自宅、実家その他諸々の鍵のキーホルダーや自家用車のエンジンスターターが床に転がっていました💦大事なものを机に置いておくとこんなことにもなるため、全く油断ができません(笑)。子ども達はもう物語の世界にすっぽり入っているため、これは私達大人側が気をつけねばならないことですから、これを教訓に、私も大事なものはうかつに机に置いておかないようこの期間中は特に気を付けようと心に誓ったのでした。

劇あそびには『失敗』や『間違い』がないため、自由に誰もがアイディアを出したり思いついたことを伝えたりできるという魅力が溢れています。だからこそ表現力や想像力、そして創造する力に加え語彙力や伝える力も増していくのです。毎年、劇あそびを通して積極性が開花する子がいるくらいです。

さあ、今年も子ども達がイキイキとあそび、このような力が育まれることを願いながら残り一週間を楽しんでいきます☆

 

 

園長    伊勢 千春

 

 

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