園長室から
心に思うこと、その時感じたことをそのまま綴る、園長の徒然日記です。
育ちに必要なもの
9月も半ばにさしかかりましたが、いまだ残暑が厳しく暑い日が続いております。最近は、私が帰宅する頃には、あちこちから秋の虫の声が大きく響き渡ってきます。こういう虫の声を聞いたり夜の少し涼しい風を感じたりすると、着実に秋が来ているのだと実感。しかし、日中はまだ毎日暑さ指数を一時間おきにチェックするのが今の日課になっています。暑さ指数が『危険』のレベル時は外あそびを控えるよう放送を入れ、それ以外は十分に注意を払いながら外あそびも楽しんでいます。今月下旬に予定している運動会の練習も少しずつ始まっておりますが、『危険』レベルは先週頃から出ておりませんので、水分をとったり休憩を上手く取り入れたりしながら安全に気を配りながら進めていくように気を付けています。運動会の練習が少しずつ始まると、暑さも相まって疲れも出やすくなります。ご家庭でも朝ごはんをしっかり食べ、早めの就寝を心がけてください。
さて、運動会と言えば園行事の中でも大きなイベントになりますし、我が子の様子や子ども達の様子などを観ることができるいい機会にもなります。
年少さんは『運動会』がまだどういうものかよくわかっていないため、皆と同じ行動がとれなかったり他のことが気になったり集中力が短かったり。そんな姿がきっとあると思いますが、それが年少さんの運動会というものです。普段とは違う環境の中でクラスの先生や皆と一緒にいるだけでも〇という寛大な気持ちで観ていただけると良いかと思います。
年中さんは少し運動会が意識され、皆と一緒に楽しんだり頑張ろうという気持ちが芽生えたりすると思います。ただ、まだ成長の差も大きいので、一生懸命頑張ろうという気持ちがある子もいれば、気持ちはあるけれどまだ存分に発揮するところまでいかない子もいます。個々の想いを認めながら体を動かす楽しさを知ってほしいと思っています。
そして、早く走れるようになりたいとかみんなで力を合わせて頑張ろうという意欲などが大きく育つのが年長さんの今の時期です。もちろん体を動かすことが好きな子もいれば他への興味の方が上回る子だっているでしょう。そして頑張りたいけれど早く走れないから走るのが嫌だとか頑張ることがきついと思う子もいるかもしれません。しかし、運動会を通して成長することはたくさんあります。あきらめずに最後まで頑張るとか、ひとりの力ではできないことも皆と力を合わせればできるという達成感や喜びなどは、本人でなければ味わえない感覚です。そういう気持ちを体得しながら心が大きく成長する絶好の機会です。これから先、踏ん張らなければならないことや、苦手でも本人なりにできるところまで頑張ること、そういう機会は必ず出てきます。そんなたくましい心育ての第一歩としての役割が運動会にはあるのです。ですから年長さんには体を動かすことを楽しみながら、そんな心の根底に備わってほしい生きていくために必要なたくましい力も少しずつ根付いてほしいと思っています。
体を動かすことは好きでも絵を描くことはあまり好まない子もいれば、絵を描くことが好きでも運動あそびはちょっと苦手…誰にでも得意不得意はあるものです。全員リレーなどは皆で力を合わせなければならないので、もしかするとあまり走るのが好きではない子は、少し後ろ向きの感情がでるかもしれません。しかし、その子なりの頑張りで良いのでひとりひとりのペースで取り組んでほしいと思っています。早く走れるようになることがその子にとっての最終目標ではなく、自分の出来る範囲のことをしながら皆と一緒に取り組もうとする前向きな気持ちの成長が目指したい姿ですから。
だからこそ私も担任時代はその子なりに一生懸命取り組めたら、あとは『持ちつ持たれつ』という言葉があるように互いに助けたり助けられたりするそんな心育てを大事にしながらクラス運営をしてきました。技術面の向上などというよりは子ども達のやる気や意欲、前向きな気持ちが育つようなそんなきっかけに運動会がなってくれたらという想いでした。
運動会に限ったことではありませんが、その子なりの頑張りや一人一人の個性を受け入れ許容し、苦手な子の分は周りの得意な子がカバーしていくような、そんな雰囲気が作れたらいいなと思っています。日々の教育活動の裏にはそんな子ども達の心の育ちが隠れていますし、私達教師もそういう目にはなかなか見えない部分を、丁寧に地道にすくい取っています。
何かに一生懸命取り組むことや、足りないところをカバーし自分にできることをひとりひとりが行うことができる社会は、私達大人の社会でも忘れずにいたい部分です。そんな未来を生きる子ども達を想像しながら、その土台作りをし、心の根っこにたっぷりの栄養を与えるのが幼児教育の役目だと思っています。
木も花も根っこが大事。
大きく立派になるか、イキイキ育つかは根っこしだい。
土の下の隠れて見えない部分こそが幼児期の部分なのです。そのことを私達はひとりひとり理解し、日々子ども達と関わっていきたいと思っています。
園長 伊勢 千春
学びを活かそう
今年の夏は仙台もかなりの猛暑続きで、体にも負担がかかってくるようなそんな暑さでしたね。皆様、体調を崩すことなくこの夏を乗り切れたでしょうか。
さて、夏休みの前半は毎年のことながら教員向けの夏季研修会が目白押しでした。私も今年度は仙台市の幼稚園教員向けの研修会を開催する立場だったので、夏休み前半は特に大忙しでした。歌の指導や運動遊び、子どもとのコミュニケーションあそびや子どものケガや病気の対応など、様々な分野の研修会があり、当園の先生達もたくさんの研修会に出てきました。現在の研修会はハイブリット研修が主ですが、昨年度に比べ会場参加の人数制限も緩和されたため会場に足を運んで研修を受けた先生達もたくさんいました。オンライン研修の良さももちろんありますが、研修内容によっては、やはり会場で受けた方がきっと勉強になるだろうなと感じる研修もたくさんありました。
そして夏休み中に各研修会の伝講会を行いました。数にすると20くらいの研修がありましたので、各自受けた研修を書面にまとめ、一冊の伝講資料が出来上がりました。一日では見切れないので、私も受けられなかった研修内容は受講した先生達がまとめてくれたものをみて学ぼうと思います。
夏休み前には2名の先生が奈良県まではるばる足を延ばし、他園の遊びの様子もみせてもらいながら学びを深めてきたため、その研修の伝講も合わせて行いました。写真を見ながら話を聞き、「ここはすごいね」「こんなところがいいよね」と、2学期からの遊びの幅を広げていくために当園でも取り入れられそうなものは参考にできたらという気持ちで伝講を聞いておりました。
私も受けた研修や伝講会で聞いた学びが刺激となって2学期以降に活かそうと考えておりますので、きっと担任達も同じだろうと思います。研修で学んだことが一つでも2学期に活かせるよう努めていければ、受けた研修が本当の意味で活きてくるだろうと思います。
幼稚園という幼児教育の現場は、ただ子ども達をお預かりしているわけではありません。子ども達が様々なことを学びながら健やかに成長していくための環境の再構成や教師の工夫などが必要不可欠です。だからこそ私達も学びをとめずに、日々深めながらそれを自分の物とした後に、子ども達に返していかなければなりません。
「にぎったらひらけ、ひらいたら撒け」
私が初代園長から聞いた大変胸に響いた言葉です。初代園長が幼い頃、もらった飴を独り占めして、てのひらに握りしめ、兄弟たちに分けなかった時に祖母から言われた言葉だったそうです。
にぎったら(自分が得たものは)
ひらけ(得たものを自分だけのものにせずにひらいて)
ひらいたら撒け(ひらいた後は得たものを周りの人へも撒いていく)
こういう気持ちを忘れずにいると皆が幸せになれると祖母から教わったと話しておられました。「自分さえよければ」「自分だけが潤えば」ではないものの考え方はいつの時代も変わらず、心にとめたいと思わされます。逆に今の時代だからこそ改めて心に刻みたい言葉でもあります。
ですから今年の研修内容も、まずは私達職員間で共有したらそれを保育で是非実践し、子ども達へ返していくという思いでおります。そんなことを繰り返しながら子ども達も先生達も共に学びあえたらいいですね。
さあ、2学期も本格的に始まりました。まだ暑さは続きそうですが、このような想いをもって2学期も頑張ります。
園長 伊勢 千春
子ども時代にたくさんの特別な経験を
早いもので1学期も残すところとわずかとなりました。
コロナが5類になったこともあり、マスクの緩和から私も新年度当初からマスクを外して子ども達と関わってきました。
やっぱり表情が見えるのはいい!表情を見せるのもいい!
思いっきり笑顔で子ども達を迎え、思いっきり大きな口をあけて笑い、とびっきりのリアクションをする(←身体だけでなく顔でも(笑))。
マスク生活が続いた数年は、どんなに頑張ってももどかしさが残る日々でした。この時期卒園しためるへんっ子たちの今が、友だちや先生と、笑顔で元気にお互いの表情で心を通わせながら楽しめるものになっていることを願います。
さて、1学期は保護者参加の行事もコロナ前のような形にほぼ戻りつつあり、子ども達の様子も見ていただいたり保護者同士の接点もうまれたりしました。今年度から保護者の給食試食も再開しました。普段子ども達がどんなふうに給食の時間を過ごしているか、どんな食べ具合かなど、まずは年長の保護者を中心に親子行事の際見ていただきながら試食も行いました。2学期は年中年少さんの保護者の皆さんにも親子行事の際、お付き合いしていただく予定になっています。
また、文化委員さん主催の保護者のミニ運動会の開催や広報委員さんの職員紹介の冊子作成などもありました。サークルのお母さんたちの活動も活発で、めるへんたいむの1コーナーとして参加してくださったり、子ども達に楽しい歌やお話の時間を設けて下さったり。制服リサイクルや清掃活動も全てボランティアの皆さんのお力で成り立ちました。
先日行われた親父の会主催の『どろんこ大会』もそうです。
親父の会の皆さんは、お仕事の傍ら貴重なお休みを利用して企画を立てて下さり当日を迎えました。しかし当日はなんと雨…。最近の天気予報はだいぶ当たる印象があったのでそれを信じて開催としましたが、お父さんたちが園庭の準備に入る直前にはかなりの雨…。雨により気温もあまりあがらないことなども考慮し、お湯もふんだんに使い、温泉コーナーのスペースも予定より広げたり、時間も状況を見ながら少し短縮したりと臨機応変に動いて下さいました。
子ども達には、「さあ~今日は特別な日だよ~。いつもは雨が降っていたらお外で遊ぶのはお休みだけど、今日は特別に雨だけどお外で遊べます!!」というような話をクラスの担任達も子ども達に伝えてくれたようで、「え~!!本当にいいの~?」「雨なのに~?!」「怒られないの~?!」「雨なのに外で遊べるなんてラッキー!」など半信半疑な子もいればワクワクが止まらない子も。雨なのに…しかも結構な雨なのに、外で思いっきり遊べる体験なんてなかなかできないですもんね。
それはお父さん達も一緒だったかもしれません。「雨の中、外で遊ぶなんて小学生以来で楽しかった」「最初は泥に抵抗があったけど、やり始めたら楽しかった」「雨が降っているのに穴掘りしたりバケツリレーで水を運んだり子ども達と一緒に遊んだり、めったにできない経験ができた」など悪天候にもかかわらずポジティブ発言が連発で正直驚きました。さすが、めるへんっこのお父さん達!
これまで幾度となく経験してきたどろんこ大会ですが、こんなどろんこ大会は初めて。めるへんの歴史上初となる伝説のどろんこ大会となりました。こんなに降る予報だった?!と天気予報を恨みましたが、雨の中準備から片付けまで行って下さったお父さま方、本当にありがとうございました。
子ども達のため、幼稚園のために動いてくださる方々の支えがあって教育が充実しています。できる方ができる時にできることをの精神は、今の忙しい現代では少しずつ薄らいできているかもしれません。しかしこうしてめるへんに携わる皆さんには、今も根強くこのようなお考えをお持ちの方が多くおられる気がします。そんな大人の後ろ姿はきっと子ども達にも見えているはずです。忙しい毎日の中で、ともすれば大人ですら自分の生活や仕事でいっぱいいっぱいになってしまいそうになるかもしれません。しかし、子ども達一人一人、一学期でできるようになったこと、頑張ったことなどがたくさんあります。そのできるようになった小さな自信が夏休み中も消えないよう、保護者の皆さんにも子ども達の気持ちを盛り上げていただきながら過ごしてほしいと思います。そしてその積み上げてきた小さな自信や意欲などの前向きな気持ちが2学期に続いていくことを願います。
熱中症にも十分注意しながら元気に過ごし、夏休みにしかできないような体験をし、また2学期、笑顔で子ども達に会えたら…と思います。
園長 伊勢 千春
こどもの好奇心
先日、帰りのお迎えを待っていたYちゃんからこんな質問がありました。
「園長先生、あの数字は何?」
Yちゃんが指さしていたのは、7月末に行われる仙台市議会議員選挙のためのポスター掲示板でした。
私「あー、あれはね。今度「選挙」って言いうのがあってね、数字のところにいろんな人の顔の写真が貼られるんだよ」
Yちゃん「どんな人のお顔が貼られるの?」
私「んー、それは選挙に出たいっていうおじさんやおばさん(←子どもではないことを伝えたかったのですが、大きくくくってしまいました💦)のお顔だよ」
Yちゃん「じゃあ、そのお顔が貼られた後はどうなるの?」
私「その後は、そのお顔が貼られた人の中から、だ・れ・が・い・い・か・な~って選ぶんだよ」 ( ※そんな簡単なものではないですが… )
Yちゃん「それは誰が選ぶの?」
私「Yちゃんのママやパパ、先生達みたいな大人が選ぶんだよ」
Yちゃん「じゃあ、その選ばれた人はどうなるの?」
私「えーっとね…(汗汗)Yちゃんたちみたいな子ども達や仙台にいるみーんなが楽しく元気に生活できるにはどうしたらいいかな~っていっぱい考えて、みんなが楽しく暮らせるようにしてくれるんだよ」
Yちゃん「えーすごい!Yも選んでみたい!」
私「そうだね。Yちゃんも大きくなってもっとお姉さんになったら選べるからね」
まだ4歳のYちゃんの鋭い質問ったら、もうタジタジになりました(笑)。間を開けず次々に飛び出す質問に頑張って食らいついていった園長でした💦💦
Yちゃんが興味を持った数字の掲示板。そしてYちゃんも選んでみたいと言っていた選挙。
Yちゃんの興味の質問攻撃に真っ向から真摯に答え、説明した私もYちゃんにこんな風に答えたからには大人の責任を果たさねば!と心にとめました。選ぶ側も選ばれる側も「頑張ろう、大人たち!」そう思った一コマでした。
お迎え待ちの短時間での、この濃厚な会話。子ども達の興味はいつどこでどんな時にうまれるのか分かりませんね。
過去にも、子どもの「なぜ?」にどこまでどのように付き合えばよいかわからない、という未就園児のママさんのお悩みを聞いたことがありました。その時の子どもからの質問は「なぜお月さまは形が変わるのか」とか「なんでまっすぐなキュウリと曲がったキュウリがあるのか」という問いだったそう。この質問をしたお子さんのこの時の年齢はまだ3歳でした。そしてお母さんは月の満ち欠けについて調べたことそのままを我が子に伝えたらしく、それが正しかったのかどう答えたらよかったのか教えてほしいと聞きに来られました。
子育てに正解や間違いはないと思いますが、子どもの年齢や状況によっても答えが変わってくるのだろうと思います。もしかすると、私だったらまだ年齢の低い3歳の子に今回のようにお月さまのことを聞かれたら、「そうだね。お月さまって、いろいろな形に変身しちゃうからすごいよね。まん丸になったり半丸になったり細っちょになったり。今日のお月さまはどんな形かな。夜になったらみてみよっか」そんなニュアンスの返答をすると思います。明確な答えには全くなっていませんが、今のこの年齢には明確な答えよりもお月さまに興味を持ったその子の想いに共感し、今日のお月さまはどんなかな、と、親子で一緒に夜空を眺めながらワクワクしたり驚いたり喜んだり。そんな感性を働かせる親子時間を楽しんでみるのもありではないでしょうか。とお答えしました。そんなことを繰り返していると、月の微妙な色の違いや雲の流れ、見える星など、新たに目に留まることも出てくるかもしれません。こうして子どもの興味や関心は様々なところに広がったり想像力がかきたてられたりひとつのこと追求してみたくなったりしていくのかもしれません。ですから、まずは子どもの『気づき』に共感すること、ふと湧いた子どもの「なぜ?」にさらりとスルーしてしまわずに、「ほんとだね。どうしてこうなってるのかな」とあえて答えを言わずに子どもと一緒にあれこれ想像してみたり考えてみたりすることを楽しむことだって大いにありだと思います。
そしていつか、もう少し年齢が大きくなって、もっと深く月の満ち欠けについて知りたいという時が来たら、その時は本質的な答えを自分で調べるようになると思うのです。
今回の4歳のYちゃんのハテナには、ほぼ真正面から回答し、会話のキャッチボールが次々に繰り広げられましたが、お月さまのような流れになることだってあるでしょう。子どもから生まれた興味や好奇心をどのように活かしていくのかは、受け取る側のセンスによっても様々な答えがあるかもしれません。数学のように明確な答えが出ないのが子どもと向き合うことです。子ども達はいつも「どうして?」「なぜ?」の好奇心でいっぱいです。まずはその子どもの好奇心に大人も一緒に寄り添い、驚きや喜びを共感し、時に一緒に想像の世界を楽しんでみることから始めてみませんか。
園長 伊勢 千春
失敗してもいいんだよ
先月から各学年体育教室が始まりました。体育教室とはいっても、子ども達にとっては「楽しく体を動かすあそびの時間」という認識で「クラスの先生ではない別の先生(体育の先生)がなんだか楽しいことをしてくれる日」そんなところから始まります。みんなと準備体操をしてみたり、ピョンピョンジャンプをしてみたり。たったこれだけのことでも、子ども達にとってはみんなと同じことをやったり隣の友だちと肩が触れたりしながら、なんだかクスっと笑顔になってしまう…そんな時間です。普段はあまり立ち入らないホールで活動するというのもまた何だか特別…そんなワクワクもあるかもしれません。
そんな体育教室ですが、先日体育専任の教諭が書いた保護者向けの『体育だより』に目を通していると、こんな内容が載っていました。
それは体育専任教諭と年中児とのやりとりの一場面のこと。
体育教諭が年中さんに「たくさん失敗していいよー」と伝えると「えー!だめだよー」という声がたくさん聞こえてきたとのこと。「いやいや、いいのいいの。失敗したら、先生が助けるから。そしてどうやったら上手になるか先生が教えるよ」と。すると子ども達も納得した様子だったそうです。「まずはやってみる」とか「失敗は悪い事ではない」ということを心にとめていろいろなことにチャレンジしてほしいとおたよりには書いてありました。全くその通りだと思います。
私も年長さんをスケート教室に送り出す時には、「みんな~いっぱい転んでおいでね~」という声を掛けます。すると子ども達からは「ちがうでしょー!滑っておいででしょー!」とか「転んだらダメでしょー!」なんて叱られます。しかし、「いいのいいの。転ばないわけないんだから。いっぱい転んでいっぱい失敗しているうちに滑れるようになるんだよ」と声をかけています。
『失敗』と聞くと、大人も子どももマイナスなイメージを持つと思います。「失敗してはいけない」とか「失敗は悪いこと」と、こんな小さな子ども達でもそう思うんですね。しかし、そもそもできないことがイコール失敗になるのだろうかと考えると、そうでもないような気がします。
少し前に年長女児のHちゃんが「園長先生!Hね、今まではうんてい最後までできなかったんだけど、何回も練習したら最初から最後までできるようになったんだよ!」と教えてくれました。「えー!すごい!園長先生もHちゃんのうんてい見たいな」とお願いすると、「今は手が痛くてちょっとできないから、これが治ったら見せるね☆」と張り切って見せてくれたてのひらがこちらです。
久しぶりに子どものてのひらにできた豆がつぶれているのをみました。こんなになるまでHちゃんは頑張って練習したのですね。「Hちゃん。これはすごいね。たくさん練習した人だけができる特別な豆ができて、それがつぶれちゃったんだね。でも、これはいっぱい頑張った証拠だからすごいことだよ。頑張った頑張った」と伝えると大満足の顔で教室に戻っていきました。
そして今日、「園長先生!もう治ったよ。」とにこにこでてのひらを開いて見せてくれました。「おおー!じゃあ、見せて!」とリクエストすると、スタートからゴールまで落ちずにうんていを元気にやりきった姿をみせてくれました。そのHちゃんの表情はというと…もちろんとびっきりの笑顔でした☆
うんていも、決してできないことが失敗ではないし、子ども達の思う「失敗」なら何度やったっていいんです。「うまくできた」「上手にやれた」「成功した」という成功体験だけを最初から求めたところでできるわけがありません。むしろ今この幼児期にたくさんの小さな「できないこと」に向き合い、このHちゃんのように何度も練習したら「できた」という満足感や達成感を積み上げていくことがとても大事なことのように思います。そしてそんな過程を経て、Hちゃんのようにできなかったことができるようになったなら、心の満足度や自信は大きなものとなるでしょう。
初めてのことや難しそうなことには、躊躇する子どももいます。しかしまだ3~5歳の子ども達。できないことや経験したことがないことがたくさんあるのが当たり前。ですから、「できないかも」「失敗したらいやだな」という子どもの萎縮してしまう心を、私達大人が「失敗してもへっちゃらへっちゃら」「最初はできないのが当たり前」と許容し、「いつも応援しているから大丈夫だよ」という安心感を与えていけたらと思っています。
今、失敗をしないで、大きくなってから壁にぶつかったり挫折を味わったりした時に、はたしてひとりひとりの心は踏ん張れるか。心もたくましくあってほしいこれからの子ども達のために、たくさんの「できなかったこと」をとがめることなく、次につながるエールとして私達大人が応援隊になっていけたらいいですね。私もめるへんっこたちの応援団長として日々エールを送ります。
園長 伊勢 千春