2025年06月24日
先日、ある企業のCEO等が今後の会社のビジョンを語っている記事を見ました。
そこには、この会社は創設以来、積み上げ式ではなく、まずは大きなビジョンをピラミッドの一番上に掲げ、そのビジョンを達成するために何が必要か逆算の方式で物事を考えてきたという内容が載っていました。その構想は何十年後の未来を見据えた長期的なもので、こんな何十年後の未来を見据えたビジョンの計画を立てていくなんて、さすが大企業だなと思いながらその記事を読みました。
私達も毎年園内研究を行っており、まずは大きな今年度の研究テーマをひとつ設けています。それは、一年間をかけてこんなこども達に育ってほしいという大きな願いですが、そういう子ども達に育つためには、どんな活動、どんな環境、どんな配慮をしていけばよいかという具体的な方法を考え、試し、時に会議で意見交換をしながら軌道修正をし、再度実践していくというものです。その方法はやはり、上記に挙げた積み上げ式とは逆の考え方と一緒だなと思っていました。
ただ、ここでふと、子どもに関わる私たちの日々の仕事や、子育てにおいては、積み上げ式の方法も大事だと思いました。
日々の小さな足元の問題、例えば、トイレトレーニングや生活習慣の確立などは毎日毎日根気よく、しかも少しずつ子どもと向き合っていかなければならない問題です。そんな日々の積み重ねがあってこそ、初めてオムツが取れたり着替えが自分でできるようになったりしていくからです。
以前、中学校の数学の先生が生徒に向けて、「数学の世界はひとつの点から始まっている。その点をたくさん積み重ねていくと一本の線になり、またその線をたくさん積み重ねていくとひとつの辺になる。その辺をまた積み重ねていって初めて立方体の形になる。だからはじめから形(結果)だけを求めようとしても、日々の小さな点の積み重ねがなければ形は作れない。みんなのやっている日々の勉強や部活動はそのような積み重ねがあってこそ、初めて形になるんだよ。」というお話をされていました。生徒たちにどう響いたかは分かりませんが、私の心にはとても深く刺さりました。私たちの仕事もまさにそうだと思ったからです。そして子育ても一緒だなと。
日々仕事で子ども達に向き合っていることも、子育てもまさに点の積み重ねだと思います。どんな子だって着替えやオムツも少しずつの毎日の積み重ねがあってこそ、大人の手を借りずに自分でできるようになるわけで、ある日突然急にできるものではありません。できるまでのスピードはひとりひとり様々ですが、そう考えると、積み上げ方式もとても大事なことだと思いました。
冒頭にあげた、目標達成のための逆算の考え方と積み上げ方式の考え方は上から下に降りる考え方と下から上に積み上げていく、簡単に言えば真逆の法則のようではあるものの、どちらも目的に向かうための手段であり、どちらの考え方も納得できます。そして、真逆の方式なのに目標達成を目指す姿勢は同じであり、面白いなと感じました。その話を家族と共有したくて話したら「おまえそんなこと考えてるんだな。俺なんてそんなこと考えたこともないわ」と軽くあしらわれてしまいました(笑)💦
軽くあしらわれてしまった残念な話ではありましたが、自分の中では結果どちらも大事であり、しっかり目標を定めてひとつひとつ具現化しながら着実に目標に向かっていきたいなと思いました。その目標の大きさは大小あって当然ですが、子育てにおいて、特に生活習慣などにおいてはこれができるようになってほしいという小さな目標に向かって日々コツコツと…となるのでしょう。しかし、その小さな目標達成をさらに積み重ねていけば子どもの自立にもつながりますね。
子育てはまさに点の積み重ね。
いつか立派な立方体の形になる日に想いを馳せて、子育てに一緒に向き合っていきましょう。
園長 伊勢 千春