園長室から

劇あそびでの育ち

劇あそび旬間も残すところあとわずか。

現在、各クラス毎絵本をモチーフにしたお話の世界やオリジナルストーリーの世界を存分に楽しんでいます。

先週から私の朝の日課は、各クラスの担任から出される劇あそびのクラスだよりチェックです。忍者や動物が出てきたり、魔女や鬼、エンマ大王が出てきたりと大忙し!全クラスのおたよりを見ていると、どのクラスもストーリーが進んでいるのが分かり、子ども達がどんな成長をしているのかもみてとれます。しかし8クラス分のプリントを確認していると、ストーリーが多種多様なのでどのクラスがどうだったかごちゃ混ぜになることもあります(笑)。ですから、実際、時間のある時は少しでもクラスをまわってどんなふうに子ども達があそんでいるのかみるようにしています。

そんな中、年少かぜ組にひょっこり顔を出すと、担任が「あっ!園長先生風邪ひいているんじゃないかな?」と子ども達にひとこと投げかけました。この日このクラスは保育室が病院になっていたようで、たまたまそこに私が現れたという訳でした。突然の担任からの無茶振りではありましたが、これは患者を装った方がいいんだろうと私も空気を読み、「ゴホゴホッ。ゴホゴホッ。あーーーなんだか体がだるいし喉も痛い。頭もクラクラするなー…。」というと、聴診器をあてられ、喉をみられ、「こちらへどうぞ!」とベッドらしきところに連れて行かれました。左下のカラフルなパネルが病院のベッド、上から吊るされているのが点滴だそうで、右下の写真はそのベッドに寝かされ病院関係者に取り囲まれているところです(笑)。ただの風邪ひき…というよりは、もはや緊急大手術!という雰囲気に(笑)。

太い注射をあらゆるところに打たれ、点滴は3本、冷えピタはおでこと喉と脇の下あたりに4~5枚貼られ、風邪だったはずですが、なぜかなぜか人工呼吸ということで頬に吸い付かれ、口には酸素マスクに見立てたプリンカップのようなものを装着されました(笑)!

ベッドに寝かされてこんなにも手厚い治療を受けたのは人生で初めての体験☆

子ども達は本当によく見ているなーと感心。日常の経験や目にしたものがそのまま劇あそびの中で再現されているのです。クラス担任だった頃、『劇あそびとは、小さな真実を積み重ね大きな嘘を創る』と教わりました。一見聞くとどういうことだろう…?とすぐには理解しにくいですが、例えばこのクラスを例に挙げれば、熱が出てお母さんに看病してもらった経験、病院にいって点滴や注射をされた経験が小さな真実であり、それらをあそびの中で繰り返し積み重ねていくことで、現実の世界とは違う想像の世界、お話の世界を楽しめ、フィクションの世界が出来上がる。これが『大きな嘘を創り上げる』ということなのだろうと思います。劇あそびとはそういうことを楽しむものなのです。

子ども達がなりきっている様々な動物も、どんな鳴き声かどんな動きをするのかその動物特有の特徴を丁寧に捉え表現していくことが小さな真実を積み重ねることになります。その小さな真実を積み重ねることが表現力を伸ばし、大きな嘘を創り上げることが想像する力を伸ばすのです。表現する力はなにも身体表現に限ったことではなく、言葉での表現にもつながります。想像する力が伸びていくということは、思ったことを周りに伝える力、友だちが発したアイディアや想像したことを聞く力、聞いたことを頭の中でイメージする力などにつながっていきます。頭の中で想像の世界が膨らんでくるとそれに必要なものを作りたくなったり、もっとこうしたらいいんじゃないかという発想が生まれたりしていき、自然と工夫する力や考える力も育っていくのです。

 

そしてめるへんで行なっている劇あそびの面白いところは保育室の中だけであそんでいないところ。

廊下やホール、他クラスや風の子公園…自分たちを取り巻く全ての環境が劇あそびの舞台なのです。これほど様々な舞台で劇あそびを繰り広げられるのは、めるへんっこ達の他にいないのではないでしょうか。こんな状況であちこちを飛び回りながらお話の世界を楽しんでいる子ども達なので、他クラスのしかけが自分のクラスのお話のスパイスになることもあったり、それを機に話が急展開することになったり。だからこそ、台本は必要ないのです。その時突然出てきた子ども達の発想や表現のどれを拾い、どんなふうにお話の世界に取り込んでいくか。そして物語の流れを整理し、子ども達に伝え、クラス全体で共通理解をはかっていかなければならないので、担任の力量も問われるのです。台本やマニュアルがないため、その場その場の対応力も必要であり、子ども達の発想やつぶやき、アイディアを埋もれさせてしまわないようにする…かなり高度なことだと思います。このように個々の思いが受け入れられるので、子ども達はやらされ感がなく、失敗や間違いもないからこそのびのびイキイキと活動できるわけです。毎日先生達も様々なものに変装し、なりきり、子どもと同じ目線になって一緒に楽しむ。だから担任の大変さとは裏腹に、子ども達は楽しいのだと思います。

ステージでの発表が観たい、写真の販売をしてほしい等のご意見をいただくこともたまにありますが、このように劇あそびが繰り広げられていますので、双方とも難しいことをお察しいただければ幸いです。その分自信を持って子ども達の成長に欠かせない表現力や会話力、想像力や工夫する力などがこの劇あそび旬間中に間違いなく育っていると思っています。育ちの大きさ、スピードはひとりひとり違っても個々が得られるものは必ずあると思っています。だからこそ、このスタイルにこだわり、教育活動として取り入れています。劇あそび旬間は終了してもこの二週間で育った力が今後の保育にもつながっていくことを期待します。

 

~最後に笑えるおまけの話~

劇あそび旬間中のある日の帰りのバス待ちの時間・・・。

年長YちゃんとKちゃん 「園長先生、見て!魔法のステッキ作ったんだよ。魔法かけてあげる?」

私 「じゃあ、お願い!」

Yちゃん・Kちゃん 「かわいくなーれ」「きれいになーれ」「モデルみたいになーれ」「メイクがじょうずになーれ」

ステッキをクルクル動かしながらこの4つの魔法を何度も何度も繰り返しかけてくれました。

私 「Yちゃん・Kちゃん、魔法は十分効いたからもう大丈夫♡素敵にしてくれてありがとう♡」

Yちゃん・Kちゃん 「だめだめ!まだまだ足りない!えんりょしないで☆」

Yちゃん・Kちゃん 「かわいくなーれ」「きれいになーれ」「モデルみたいになーれ」「メイクがじょうずになーれ」……

私 (ええぇ~!?私そんなにダメぇ?!)←注意!!これは心の声 ※心の中で一人大爆笑

そしてこの魔法はYちゃん・Kちゃんがバスに乗り込むまで続いたのでした…(苦笑)。

 

 

園長    伊勢 千春


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